研究課題/領域番号 |
20K14243
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
三原 健吾 久留米大学, 付置研究所, 研究員 (30846572)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 心理的ウェルビーイング / 人生の意味 / 自己成長感 / 精神的健康 / 睡眠の客観的評価 / 横断的調査研究 |
研究実績の概要 |
本研究は,心理的ウェルビーイング(生きがいや自己成長の追及にかかわる心の特質:psychological well-being)が心身の健康に及ぼす心理生物学的機能の解明を目指すための健康心理学的研究を行うことにある。今年度は,心理的ウェルビーイングと精神神経内分泌免疫系及び健康行動(睡眠や運動など)との関連性を明らかにするために,心理社会的要因も含めて,大学生を対象に横断的調査研究を行った。 その結果,心理的ウェルビーイングは,主観的健康感の高さや抑うつの低さと関連することが明らかとなった。また,健康行動における睡眠においては,心理的ウェルビーイングのなかでも,特に自己成長への意識及び人生の意味を強く自覚する大学生ほど,客観的に評価された入眠潜時が短いことが明らかとなった。さらに,人生の意味保有の高さと睡眠効率の高さが関連することが示された。この結果は,ネガティブ感情,性別,年齢,BMI,飲酒,喫煙習慣を統計的に統制したうえでも認められた。 これらの結果から,心理的ウェルビーイングと様々な健康関連要因との関連性が明らかとなった。特に,客観的に評価された睡眠の質は心理的ウェルビーイングと密接に関係していることが示唆された。今回は横断的研究のため,今後縦断的に心理的ウェルビーイングが様々な要因にどのような影響を与えるのか,また,精神神経内分泌免疫系や健康行動などの要因が心理的ウェルビーイングにどのような影響を与えるのか,双方向的に見ていく必要性があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,心理的ウェルビーイングと神経系,内分泌系,免疫系との関連性を検討することを目的としていたが,新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により,学生や研究者の入構が制限され,研究設備・機器を用いた調査・実験の実施が,限りなく困難な状況であった。そのため,唾液を試料にして神経内分泌免疫系指標の測定を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
未だなお新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中で,可能な範囲での研究を実施する。密閉・密集・密接の3密に十分に留意しながら,研究参加者と実施者を新型コロナウイルス感染症の脅威から守るために,対人接触のないウェブ調査などによって研究を進める。また,現状では唾液を採取することは困難であるため,指先のカフから連続血行動態や自律神経系の変化が測定可能なFinapres NOVAをを用いて,心理的ウェルビーイングとバイオマーカーとの関連性の検討する予定である。しかし,今後の新型コロナウイルス感染症の推移は予測ができないため,研究倫理上,対人接触を伴う研究が困難である場合は,心理的ウェルビーイングと精神神経内分泌免疫系機能に関する文献の系統的レビューやメタ分析を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により,学生や研究者の入構が制限され,研究設備・機器を用いた調査・実験の実施が,限りなく困難な状況であった。そのため,当初予定していた唾液を試料にしたバイオマーカーの測定は行うことが出来ず,コルチゾールや炎症マーカーなどの測定キットも使用期限があるため,購入しなかった。また,感染拡大防止のため学術大会が延期や中止になり,学会参加による旅費の使用が減少した。次年度では感染状況に留意しながら,可能であれば唾液採取を行い,コルチゾールやインターロイキン-6などの生理指標の測定を試みたいが,困難である場合は,指先や額から心拍変動を測定することが出来る装置を新たに購入し,心臓血管系や自律神経系と心理的ウェルビーイングとの関連性を検証する予定である。
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