研究課題/領域番号 |
20K14249
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
請園 正敏 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 知的・発達障害研究部, リサーチフェロー (50787778)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 社会的促進 / 前部帯状回 / リーチング / 自閉症モデル動物 |
研究実績の概要 |
本研究は社会的促進のメカニズム検討を目的とした。 社会的促進とは、他者の存在の有無によって促進が生じる現象であり、他者の存在が観察者であるときと(観察効果)、他者の存在とともに同じ課題に従事するとき(共行動効果)とで、分けられている。前部帯状回を破壊したラットにおいて、水飲み行動では、観察効果が生じず促進がみられなかった。一方、共行動効果には前部帯状回破壊の影響がみられず、促進が生じた。以上のとこまでデータをとった。本結果が水飲み行動に特異的に生じたかどうかを検討するため、摂食行動においても同様に前部帯状回破壊の結果、観察効果と共行動効果に影響するかを今後検討する。 前部帯状回破壊は、自閉症モデル動物の一つであると考えられている。そこで、社会的促進のメカニズムを検討する方法論として確立させた、ラットにおいて頑健に社会的促進が生じる対面式リーチングタスクをマウスに応用し論文化した。自閉症モデル動物はマウスを用いて遺伝子操作や薬物操作により、多く開発されている。今後、社会的促進の検討が、自閉症モデル動物に対して実施することで、広く社会性のメカニズム検討につながることが期待できる。さらに、自閉症モデル動物にて促進行動を起こす状況を作れるとしたら、自閉スペクトラム症への臨床応用が可能かもしれない点で意義深いと考えられる。今後、前部帯状回破壊による自閉症モデル動物と、そのほかの自閉症モデル動物とで、観察効果と共行動効果、どちらに影響を与えるか否かによって、脳内の深部に問題があるのかを切り分けることも可能かもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東北大学から国立精神・神経医療研究センターに移動したため、研究が一時ストップした。すでに国立精神・神経医療研究センターにて倫理委員会に本研究課題について承認されたので、研究を実施できる体制が整った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、国立精神・神経医療研究センターにて、前部帯状回破壊のオペを実施し、脳だしから破壊範囲の染色が、ここの施設でも同じように行えるかをまず検討する。 その後、摂食行動としているパスタを食べるかどうか、ナイーブ個体でパイロット検討を実施後、実際に前部帯状回を破壊し、観察効果および共行動効果への影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品については、3点購入した。局所脳破壊手術の際に、実験室内に置き続け、電流を制御するプログラムを走らせ、データの保存などに使用するノートパソコンを購入した。オペのための止血剤および縫合のためのアロンアルフアを購入した。 旅費については、東北大学から国立精神・神経医療研究センターに急遽移動となったため、東北大学で残してあった実験器具などの回収、また購入していた実験動物で行動試験を行うため出張した。 その他の項目では、社会的促進を用いている研究論文の英文校閲および情報収集のために参加した日本心理学会大会の参加費として使用した。
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