コロナ禍の教育機関の事情により、予定していた教育機関で十分な児童・生徒数を紹介してもらうことが困難となったが、これまでの年度では、中枢性疲労を調べるための神経心理学的・生化学的・認知神経科学的手法の確立に向けた、データ収集方法および解析プロトコルを実装してきた。具体的に、約200名の児童・生徒を対象とした疲労・睡眠調査および神経心理学的検査、尿の採取および物質解析の確立、脳画像の解析と統計手法の確立などである。その成果として、国際誌への受理や書籍の発刊などがある。また、最終年度では病院・その他の教育機関などから一定数の児童・生徒を紹介してもらうことができた。その上で、不登校傾向児の中枢性疲労とそれに関係した分子神経機序を明らかにするために、尿中のアミノ酸と神経伝達物質の動態、脳活動・脳構造を調べた。参加者には登校頻度、ミュンヘンクロノタイプ尺度、慢性疲労症候群診断基準、Chalder疲労尺度の質問項目を回答してもらい、不登校傾向の児童・生徒とそうでない児童・生徒を抽出した。その後、神経心理学検査(トレイルメイキングテストなど)、生化学検査(尿中のトリプトファン、ノルアドレナリン代謝物、セロトニン代謝物、ドーパミン代謝物)、MRI検査(安静時fMRI、T1強調画像、DTI画像)をおこなった。上述した通り、十分なサンプル数ではないが約44人のデータ取得が完了し、現在、研究成果報告書の作成に向けて、生化学解析とMRI解析に取り組んでいる。
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