研究課題/領域番号 |
20K14257
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉本 早苗 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 助教 (80773407)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 視覚 / 感情 / 感性 / 不快感 / フリッカ / 画像統計量 / 色覚 |
研究実績の概要 |
人が好ましく感じる画像をフーリエ変換すると、その振幅スペクトルは空間周波数の逆数に比例する傾向がある(1/f)。この特徴は自然画像によく見られ、振幅スペクトルが1/fから逸脱する画像は不快に感じられやすい。時間次元においても同様に1/fという時間周波数特性が感情喚起において特異的であることが示されているが、これまでの研究で用いられた視覚刺激は輝度変調フリッカパターンであり、色調変化が快・不快感に及ぼす影響は検討されていない。本研究計画では、フリッカ刺激がもたらす快・不快感の強さと色コントラスト及び時間特性との関係を明らかにすることを目的とした。そのため、フリッカ刺激において交互に点滅する2色間の色相差、彩度差、及び輝度差を複数段階で設定し、快・不快感の強さを評定する。また、心理物理実験から特定した、強い快・不快感を喚起する色コントラストを持つフリッカ刺激観察時の脳活動をfMRIで計測し、快・不快感をもたらす機序解明を目指す。 今年度は、フリッカ刺激の色コントラストを構成する2色を色覚の標準モデルに基づいた色空間から選択し、快・不快感の強さを測定する予備実験を行うとともに、快・不快感をもたらすフリッカ刺激の時間成分について検討した。その結果、時間周波数の振幅(1/f)だけでなく位相が快・不快感に影響し、視覚の初期過程に仮定されている時間インパルス応答関数に基づく線型モデルでは快・不快感を予測できないことがわかった。以上の研究成果は海外学術誌に発表した(Yoshimoto et al., 2020, Vision Research)。また、フリッカと快・不快感に関する先行研究を洗い出し、レビュー論文を執筆した(心理学評論, 印刷中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、強い快・不快感をもたらすフリッカの色コントラスト及び時間特性を同定することを目的とした心理物理実験を初年度に実施する予定であった。しかしながら、新型コロナウィルスの感染拡大により対面での実験が困難となり、十分な実験データを得ることができなかった。次年度は適宜対策を講じつつ計画の進捗を図る。
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今後の研究の推進方策 |
予備実験から、2色が交互に点滅するフリッカ刺激を用いた場合、これまでに輝度変調フリッカ刺激を用いて報告された快・不快感における振幅の影響が弱まり、快・不快感が色相差に依存することを見出した。次年度は、この点についてさらなる検討を行い、国内外の学会・学術雑誌における発表を目指す。また、実験参加者の健康・安全が確保できると判断される場合には、fMRI実験のデータ取得を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は心理物理実験に使用する機器・ソフトウェアの他、実験参加者・補助者への謝礼と国内外の学会参加に伴う旅費を計上していたが、新型コロナウィルスの感染拡大による対面実験や移動の制限により、謝礼と旅費の支出が計画通りにできなかった。そのため、次年度使用額が発生した。 次年度は適宜対策を講じつつ、初年度に行った予備実験に基づいてデータを取得し、その論文化を目指す。次年度使用額が生じた助成金は、その点において使用する予定である。
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