研究実績の概要 |
ラバーハンド錯覚(Rubber hand illusion, RHI)の発見により、成人を対象に身体所有感の生起メカニズムが盛んに検討されているが、その発達プロセスは未だ解明されていない。本研究は新しいRHI実験パラダイムを提案し、発達初期に身体所有感がどのように獲得するのかを検討する。最近の研究では(Ferri1 et al., 2013; Guterstam et al., 2019)、ラバーハンド錯覚が起きているときに、実験者の手がラバーハンドに接近するだけで、成人参加者には強い皮膚電位反応(SCR)が惹起することが報告されている。この現象を利用し、乳児でも客観的な指標でRHIの生起を検討できると考える。実験の際に、把握の姿勢をとったラバーハンドを乳児に見せ、本物の手が把握の姿勢をとったときにラバーハンドと同時に撫でる。実験室は暗室であり、把握姿勢が保持できるときのみライトをラバーハンドに照らし、把握姿勢が保持できなくなると、ライトを消すことにより、自分の手の形態とラバーハンドの形態の一致が崩れる状況が見えないようにする。本物の手とラバーハンドを1分間撫でた後に、実験者の手をラバーハンドに近づけ、その際の乳児の皮膚電位反応を測る。昨年度、ラバーハンドと実験装置を作成し、2名の8ヶ月児を対象に、実験装置の有効性を確認した。また、皮膚電位反応(SCR)を測るために、生体アンプの設定と、記録プログラムの作成も完了した。
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