研究課題/領域番号 |
20K14275
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研究機関 | 京都市動物園 |
研究代表者 |
櫻庭 陽子 京都市動物園, 生き物・学び・研究センター, 研究員(移行) (50797602)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 霊長類 / 動物心理 / 態度 / 身体障害 |
研究実績の概要 |
本研究はヒト以外の霊長類が「身体障害」をどう認識し反応しているのか,身体障害が社会的支援の獲得や社会的ハンデに繋がっているかどうかを目的にしている。今年度は主に身体障害がある霊長類の行動観察や認知実験用の写真や動画などの素材を集めるため、様々な動物園を訪問する予定だった。しかし新型コロナウィルス感染症拡大により、今年度は高知県立のいち動物公園を中心に調査を行った。高知県立のいち動物公園では身体障害個体を含まないチンパンジー群のデータを収集し、以前に収集した身体障害個体がいる2群といない1群チンパンジー群との比較を行った。また同園で飼育されている2013年生まれの脳性まひチンパンジー(人工保育で現在も一人暮らし)の行動観察を2016年から継続しており、今まで得られた知見から人工保育の弊害を解消するべく動物園スタッフとともに社会環境構築への計画を情報共有した。新型コロナウィルス感染症拡大により、予定していたそのほかの動物園への観察や試料収集はできなかったが、以前から継続していた脳性まひのチンパンジーの発達支援や行動観察について口頭発表という形でまとめることができた。 2020年12月4~6日に日本霊長類学会(オンライン)にて「身体障害を伴うチンパンジーに対する群れメンバーの行動:縦断的・横断的比較」のポスター発表、2021年3月6日のプリマーテス研究会(オンライン・オンサイトのハイブリッド)にて「脳性まひチンパンジーへの療育活動の評価と課題~子ども期から思春期直前まで」の口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属の京都市動物園での写真などの試料収集、高知県立のいち動物公園で飼育されている脳性まひチンパンジーの療育・行動観察とともに、身体障害個体がいない群れ個体の行動観察・資料収集を進められた。またビデオカメラ及び古くなっていたノートパソコンを新しく購入し、複数のビデオカメラによる観察、画像・動画加工、ビデオ分析などに活用した。一方新型コロナウィルス感染症拡大により、観察や試料収集を予定していたほかの動物園に行くことが難しくなり、行動観察データや認知実験用に使用する写真や動画などのデータが思うように集まっていない。
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今後の研究の推進方策 |
京都市動物園を退職し、豊橋総合動植物公園(本業)に移ったことにより、豊橋総合動植物公園でのチンパンジーを中心とした霊長類の観察、試料収集を進める。同時に、愛知県内にある名古屋市東山動植物園と日本モンキーセンターでのデータ収集を試みるが、職場及び仕事内容、公休数の変更に伴う時間配分、各動物園の方針、新型コロナウィルス感染症の状況を鑑みながら進めていく。また認知実験用のプログラミング構築を進め、新型コロナウィルス感染症が収束し県境を越えた研究活動がすぐにでも始められるよう準備を進める。さらに、豊橋総合動植物公園では人を対象にした認知実験もできるよう、園内スタッフとも協議していく予定だ。 オンラインでの学術大会やシンポジウムの開催が増えていることから、本業に従事しながらも、年に少なくとも2回以上の発表(動物の行動と管理学会、日本霊長類学会、動物園水族館教育研究会、プリマーテス研究会など)を目指す。
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