研究実績の概要 |
Lauricella の超幾何関数 F_C に関して, 従前より進めていたモノドロミー群が有限既約になる場合についての研究を引き続き行い, 成果をまとめた論文が学術雑誌に掲載されることとなった. 2変数の場合(Appell の F_4 と呼ばれる)には, 加藤満生氏による先行研究があり, 本研究はそれを多変数に拡張したものとなっている. 具体的には, モノドロミー群の生成元の明示的表示および鏡映部分群の構造を精査することで, モノドロミー群の有限既約性の必要十分条件を記述し, さらに有限既約モノドロミー群の構造に関する定理を導くことができた. 神戸大学の松原宰栄氏と共同で, 確定特異点型のGKZ超幾何系の級数解に対応するねじれサイクルに関する交点理論の研究を進め, その結果をまとめた論文を学術雑誌に投稿した(現在査読中). GKZ超幾何系の級数解に対応するねじれサイクルについては, 松原氏の先行研究により多くの結果が得られており, 特にユニモジュラーな三角形分割を持つ行列に付随する場合に対しては, 交点理論も整備されていた. 本研究では, ユニモジュラーでない場合にも適用できるよう議論を一般化した. 具体的には, 適切な被覆空間を用いることで, 考えているねじれサイクルの交点数を組み合わせ論の言葉で明示的に記述することができた. さらにこれを用いてねじれ周期関係式と呼ばれる, 超幾何級数の間の2次関係式も明示的に記述した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響もあり, 当初想定していただけの研究に対する時間を確保できなかった. また, 研究集会等での発表を控えたため, 研究発表の実績も少なくなってしまった. 一方で, F_C のモノドロミー群の論文の掲載が決定したほか, GKZ超幾何系に付随するねじれサイクルの交点数に関する論文を取りまとめ投稿に至ることができたので, ある程度の進展はあったと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
退化配置に付随する超幾何積分に関して, 交点理論に基づく隣接関係式の研究を進めていく予定である. この超幾何は「構造的ゼロ」を持つ2元分割表における周辺和固定の条件付き分布の正規化定数の表示式に現れるため, 代数統計の視点からも重要な対象であり, 統計への応用も視野に入れた形での定理や公式の定式化を目標とする. また, 次年度以降は可能な範囲で研究集会での発表も行い, 他の研究者との意見交換もしていきたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は全く出張ができなかったため, 旅費に相当の残額が生じた. 新型コロナウイルスの感染状況がある程度落ち着いたのち, 積極的に研究集会に参加したり, 研究連絡したりしたいと考えている. (Web会議システム等での研究連絡も実施しているが, 対面の方がスムーズに議論が進むという場面が少なくない. )
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