研究課題/領域番号 |
20K14281
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
藤田 直樹 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (40866357)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | トーリック退化 / クラスター代数 / Newton-Okounkov 凸体 / リチャードソン多様体 / 半トーリック退化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はクラスター代数の理論を用いて旗多様体のトーリック退化に対する統一的な理解を与え, シンプレクティック幾何学へ応用することである. 今年度は芝浦工業大学の大矢浩徳氏との共同研究において, A と X という二種類のクラスター座標から生じる Newton-Okounkov 凸体たちを関連付けるとともに, 旗多様体のクラスター構造から生じるリチャードソン多様体の退化について考察し次の結果を得た.
Morier-Genoud はストリング多面体から生じる旗多様体のトーリック退化がリチャードソン多様体の半トーリック退化を誘導していることを証明した. いくつかの特別なストリング多面体の場合には Morier-Genoud による半トーリック退化の退化先を具体的に記述することができ, それは Kogan 面や pipe dream などのシューベルト・カルキュラスの理論における重要な概念と密接に関係している. 報告者は 2019 年度に行った大矢浩徳氏との共同研究において, カルタン行列が対称であるシューベルト多様体のトーリック退化をクラスター構造から構成する枠組みを与え, それがストリング多面体から生じるトーリック退化の拡張となっていることを証明した. 今年度の研究ではこのトーリック退化を一般リー型の場合まで拡張し, さらに Morier-Genoud の結果が旗多様体のクラスター構造から生じるトーリック退化まで拡張できることを証明した. この結果はクラスター構造から生じるトーリック退化がシューベルト・カルキュラスのモデルの良い候補を与えていることを示唆しており, 本研究の更なる発展が期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前半の研究の目標であった A と X という二種類のクラスター座標から生じる Newton-Okounkov 凸体たちの間の関係を与えることに成功した. またシューベルト多様体のクラスター構造から定まるトーリック退化を一般リー型の場合まで拡張することができた.
さらに旗多様体のクラスター構造から生じるトーリック退化がリチャードソン多様体の半トーリック退化を誘導していることを証明し, Kogan 面や pipe dream などのシューベルト・カルキュラスにおける重要な概念とクラスター代数の理論を関連付けた. この結果は次年度以降の研究の応用範囲を広げるものであり, 本研究のシューベルト・カルキュラスへの応用が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は旗多様体のクラスター構造から生じる完全可積分系がトロピカル変異によって移り合うかどうかを解明する. まず階数の低い具体的な場合を計算し, その結果を参考に一般の場合を調べる. A 型旗多様体の場合にはミラー側の超ポテンシャルが具体的に与えられている. そのため完全可積分系と超ポテンシャルを比較しながら研究を進める.
並行して旗多様体のクラスター構造から生じるリチャードソン多様体の半トーリック退化について考察し, その具体的な記述を求める. A 型ストリング多面体の場合には Gleizer-Postnikov パスを用いた多面体の具体的な記述が存在するため, それを用いてリチャードソン多様体に対応する面を決定する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の感染拡大により, 予定していたケルン大学 (ドイツ) への研究訪問が再び延期となったため次年度使用額が生じた. 翌年度分として請求した助成金とともに延期となった研究訪問の旅費および COVID-19 の感染拡大によりオンラインとなった研究集会への対応などに使用する.
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