研究課題/領域番号 |
20K14284
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
越川 皓永 京都大学, 数理解析研究所, 助教 (10791452)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | p進Hodge理論 / プリズマティックコホモロジー / 対数的幾何 / 志村多様体 / 局所対称空間 / 保型表現 / 被覆群 / 超ケーラー多様体 |
研究実績の概要 |
整p進Hodge理論の研究を進めた。Zijian Yao氏と共同研究してきた対数的プリズマティックコホモロジーについての基礎的な部分の論文の執筆が概ね完了した。また、関連する話題として、プリズマティックコホモロジーのサイクル類やPoincare双対、対数的設定での係数理論やスタック的アプローチといった事項についてもいくつかの考察を行った。 昨年度に証明したユニタリ志村多様体の捩れ係数コホモロジーのCaraiani-Scholze型の消滅定理を背景に、より一般的な主張を研究した。まず、古典群の局所対称空間の有理係数コホモロジーに対して、近年の保型表現の研究(ArthurやMokによる保型表現やその局所的場合のより精密な研究)を応用することで、類似の消滅定理を証明した。ここまでの研究はすべて、ある有限素点である意味でHecke作用が「一般的」という仮定を課した場合のものであったが、この条件を外した時にどうあるべきかを更に考察し、いくつかの結果や予想を得て、引き続き研究中である(部分的にSug Woo Shin氏との共同研究)。 Fargues-Scholzeによる局所Langlands対応の幾何化を被覆群に対しても実行する研究を開始した(Tony Feng氏、Ildar Gaisin氏、今井直毅氏、Yifei Zhao氏と共同)。まず、被覆群についてのZhaoの研究をFargues-Scholzeの設定で上手く用いることができることを見出した。 超ケーラー多様体のコホモロジーについて研究した(伊藤和広氏、伊藤哲史氏、高松哲平氏と共同)。複素数体上の場合に、退化とモノドロミーについての永井氏による予想が近年研究されている。そこで、p進体上の類似を考え、Galois群の作用から定まるモノドロミーについて永井予想と同様の主張を研究した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
整p進Hodge理論については、特に基礎部分についてはほぼ当初の予定通り進み論文も執筆することができた。ただ、より進んだ個別の事項についての研究は他の研究に時間を割いたため十分にできなかった。 局所対称空間のコホモロジーの消滅定理については、保型表現の最近の研究が使えることは予期しておらず、大幅に研究が進んだといえる。また、Sug Woo Shin氏との共同研究も始めることができ、研究を加速することができた。 Fargues-Scholzeの幾何化の被覆群の場合については、根本的にアプローチ可能であるかどうかは明らかではなかったため、Zhaoの研究が使えることを理解したのは大きな一歩である。また、様々な交流の下に共同研究も始めることができた。 超ケーラー多様体のコホモロジーについても結果を得ることができた。超ケーラー多様体の数論幾何的な観点からの研究はまだ非常に少ないため、貴重と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
5月から8月にかけてBonnのHausdorff Research Institute for Mathematicsで行われるThe Arithmetic of the Langlands ProgramというTrimester Programに参加し、情報収集や共同研究を行う。Langlands programに関連する事柄を中心に研究する予定である。Caraiani-Scholze型の元々の消滅定理にはついては私の研究の他にも大きな進展があったため、この方向についても理解を進めたい。 対数的プリズマティックコホモロジーのスタック的アプローチについて何人かの研究者と交流し情報を共有している。興味深い現象もいくつか示唆されはじめているため、この方向についても検討していく。 上記以外の共同研究も行っているが、共同研究者と協力することで着実に研究を遂行していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍に使用できず繰り越した分があったため。現時点では出張の制限はないため、旅費として使用する予定である。
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