研究実績の概要 |
今年度は, 多重ポリログ関数の2-パラメータ変形(q-類似の p-変形)$L_r(z;p,q)$とその母関数の満たす q-差分方程式, および, ルート系ゼータ関数の q-類似とその p-変形について研究を行った. 前者については, もともとはトーラス上の積分で定義されていた, $L_r(z;p,q)$の級数表示を求め, それを用いて$L_r(z;p,q)$の満たす, $q$-差分漸化式を求めた. さらに,和の母関数を パラメータ p のべき級数に展開し, 所謂「定数変化法」を用いることで, 和の母関数が, q-超幾何関数と Kronecker関数を含む積分で表示できることがわかった. 特にパラメータpが0のときは, q-超幾何関数の変換公式や和公式を用いることで, qー多重ポリログ関数の和の母関数を単独のq-超幾何関数で表す公式が得られる. 後者については, ルート系ゼータ関数のq-類似について, そのWeyl群の作用について対称性を持つ和が, Kronecker関数の積のトーラス上の積分で表示できることがわかった. Kronecker関数の満たす基本的公式である, Fay恒等式を用いることにより, この和はKronecker関数で表されることがわかる. 特に対応するルート系がA_2, A_3型のときは,この表示は, Gunnells-Sczech の結果のq-類似とみなせる. さらに, ルート系ゼータ関数の2-パラメータ変形を構成し, その基本的性質を調べた.
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今後の研究の推進方策 |
多重ポリログ関数の2-パラメータ変形(q-類似の p-変形)$L_r(z;p,q)$とその母関数の満たす q-差分方程式の研究については, 先行研究との関連や得られた結果の応用、一般化を考察する.ルート系ゼータ関数の2-パラメータについては, リー環やルート系に関する先行研究の成果も援用しながら, 基本的性質や数論や表現論への応用を調べる.
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