研究課題/領域番号 |
20K14291
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
足立 崇英 山口大学, 国際総合科学部, 助教 (90737298)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 準傾対象 / 変異 |
研究実績の概要 |
NakaokaとPaluにより導入されたextriangulated圏はアーベル圏・完全圏と三角圏を同時に一般化した概念である. 2021年度の研究では、三角圏の準傾対象の自然な一般化として、extriangulated圏の準傾対象の概念を導入し、余t構造との関係を調べた。その結果として、三角圏の場合と同じくextriangulated圏の準傾対象全体も半順序構造を有することがわかった。また、大域次元が有限の多元環においては加群圏をextriangulated圏としてみた準傾対象は傾加群と一致することを示し、AusnalderとReitenの結果を復元することができた。2022度の研究では、extriangulated圏の準傾対象の性質をさらに調べた。その結果として, 三角圏の準傾対象や傾加群の持つ様々な性質がextriangulated圏の準傾対象でも成り立つことがわかった。山口大学の塚本真由氏との共同研究である。 (1) 変異について: 三角圏の準傾対象や傾加群には変異と呼ばれる操作があり、半順序構造との密接な関係が知られている。同様にして, extriangulated圏の準傾対象にも変異の概念を考えることができ、さらに変異と半順序構造の間に密接な関係があることもわかった。 (2) 傾加群の解釈: (大域次元が有限とは限らない多元環上の)傾加群は加群圏のある完全部分圏の準傾対象に一致することがわかった。この結果として、前年度に得られた結果を一般の多元環の場合に拡張することができ、AuslanderとReitenの結果を完全な形で復元することができた。 これら以外にもGrothendieck群の構造やBongartz完備化の問題などについても一定の成果が得られた。以上の結果を1本の論文としてまとめ、査読付き雑誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
準傾離散型の多元環のクラスに関する研究について一定の成果をあげることができなかったため。その一方で、extriangulated圏の準傾対象とその変異に関する結果を得ることができ、準傾離散型の多元環の研究に活かせる可能性があることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまで通り準傾離散型の多元環の研究を行う。また、extriangulated圏の観点からも研究を行う。三角圏の拡大で閉じた部分圏はextriangulated圏となる。この性質から加群圏と加群圏を1つシフトしたものの拡大をとったものもextriangulated圏になる。このように三角圏の部分圏として実現されるextriangulated圏の準傾対象の性質を調べることで、準傾離散型の多元環の研究に活かせると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により、予定していた出張を取り止めたため次年度使用額が生じた。徐々に研究集会や研究打合せが再開されるようになると思われるためそれらに使用する。
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