研究実績の概要 |
整数係数二元二次形式から定まるEisenstein級数と呼ばれる対象がある.二次形式の判別式の符号に応じて放物型/楕円型/双曲型と分類され,自身の以前の研究において,重さ2の場合にそれぞれharmonic/polar harmonic/locally harmonic Maass形式が得られることを示していた.本年度はまず,重さ2の双曲型Eisenstein級数のFourier係数を明示的に計算し,重さ0の弱正則モジュラー形式のサイクル積分を用いて記述できることを明らかにした. 関連して,植木潤氏(東京電機大学)と共同で,三角群Γ(p,q,∞)に対する重さ2のモックモジュラー形式を考察し,古典的なRademacher記号の拡張を行なった.さらに空間Γ(p,q,∞)\SL2(R)(トーラス結び目の補空間)内にモジュラー結び目の三角群類似を定義し,「モジュラー結び目とトレフォイルの絡み数がRademacher記号に等しい」というGhysの結果を,一般のトーラス結び目に対して拡張することに成功した. また植木潤氏と共同でFriday Tea Time Zoom SeminarというZoomを用いたオンライン型の研究セミナーを立ち上げ,計30回の開催を行った.新たに始まった共同研究も多く,Beata Benyi氏(University of Public Service)と行なった対称化多重Bernoulli数の組合せ的解釈,齋藤耕太氏(名古屋大学)と行なったPiatetski-Shapiro列からなる長さ3の等差数列,に関する研究論文はそれぞれThe Electronic Journal of Combinatorics, Acta Arithmeticaに掲載が決まっている.
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