研究課題/領域番号 |
20K14294
|
研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
田坂 浩二 愛知県立大学, 情報科学部, 准教授 (30780762)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 多重ゼータ値 / モジュラー形式 / 有限代数的数 / 多重モジュラー値 / レベルNの多重ゼータ値 |
研究実績の概要 |
多重ゼータ値と有限多重ゼータ値の関係を記述する金子-Zagier予想とその精密化について,q類似の観点から一般化を行った前年度の結果を精査し,さらなる改良を行った,これらの結果は論文にまとめ,投稿中である.Mordell-Tornheim型の多重ゼータ値について,小森氏による金子-Zagier予想の正負混合インデックスへの拡張についても小野雅隆氏(早大),岡本卓也氏(豊橋技科大),門田慎也氏(新居浜高専)と共同で研究を行い,2重の場合に類似の成果を得た.代数的数の有限類似の研究をJulian Rosen氏(Maine Univ)および竹山美宏氏(筑波大)と共同で進めた.有限類似における一つの特徴は,零因子が大量にあることにある.本研究では,与えられた定義多項式の分解体で完全分解する素数の情報からなる`代数的な'零因子の特徴づけを,異なる二つの定義多項式の族に対して行った.この結果はQ上のアーベル多項式の新たな特徴づけを与える足掛かりとなりえる興味深い発見となった.また,q級数に関するRogers-Ramanujan typeのpolynomial identityを応用したという経緯もあり,様々な方向性の研究に派生することが期待できよう. レベルNの多重ゼータ値について,代数構造の基礎を整備した.特に,レベルNの多重ゼータ値を多重L値で表示する方法から得られる代数的な写像が,シャッフル積や調和積について準同型であることを見抜き,ここから自然に多重L値の正規化の概念をレベルNに翻訳できることがわかった.その他,多重モジュラー値について,BrownによるTransferenceの理論から得られる関係式族の理解を深め,数値的な観察を行ったり,定期的にモジュラーセミナー(非公開)を開催し,多重ゼータ値とモジュラー形式に関する知識の共有を図った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
q類似からのアプローチによる金子-Zagier予想の整備が進展するのみならず,有限代数的数の研究に派生したのは思いがけない収穫であった.また,モジュラー現象の解明・高レベル化について,レベルNの多重ゼータ値の基本理論の構築が進み,次の段階に進むための準備ができた.多重モジュラー値についてもBrownの論文の解読を継続して行えている.
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画の方策に加え,新たな課題として,近年,モジュラー現象の高レベル化という研究において,他で新たな成果がいくつか得られつつあるが,こういった結果を多重Eisenstein級数を用いて理解するという取り組みを行いたい.
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により,計画していた研究打合せや研究集会への参加が叶わなかったため,残額が生じた.使用計画としては,国内については徐々に通常通りの出張ができるようになってきたので,昨年度までできなかった研究打合せを加速させたい.また,海外に行けるようになれば,海外の研究者との研究交流や研究集会での講演を行う.
|