最終年度はL関数の族の特殊値の重み付き零点分布に関していくつかの研究集会で講演し、参加者と研究討議をおこなった。特に中国のHarbinで開催されたPan Asian Number Theory Conferenceでの招待講演の際に、今後の研究につながる研究討議をおこなうことができた。イギリスのBristolで開催されたL関数とランダム行列理論に関する研究集会に参加し、L関数やランダム行列理論に関する最近の動向を探ることができた。 さらに、Iベッセル関数の格子上の和に関する変換公式のPoisson和公式を用いた別証明を発見し、テータ関数、符号理論、半離散熱方程式への応用も見出すことができた。この成果は論文にして現在投稿中である(滋賀大学の長谷川武博氏、長浜バイオ大学の西郷甲矢人氏、工学院大学の齋藤正顕氏との共同研究)。 さらに、Hecke作用素の固有値が代数的整数であることの証明、およびそのHecke体の拡大次数評価への応用に関する成果を論文にまとめた。現在preprintである(信州大学の佐久川憲児氏との共同研究)。 2020年度~2023年度のあいだに、Hurwitz類数の平均に関する最適評価に関する論文、耐量子暗号に向けたラマヌジャングラフの明示的構成に関する論文、GL(2)×GL(3)のL関数の中心値が非ゼロである保型形式の密度の下界評価に関する論文が出版された。対称べきL関数の族の重み付き零点分布について新たな現象を発見し、論文を執筆した(現在preprint)。新たに発見したこの現象のDirichlet L関数版を見つけ、こちらは論文として出版された(九州大学のAde Irma Suriajaya氏との共同研究)。グラフのnon-backtracking pathの数え上げ数列の行列版を考察し、この成果は出版された(工学院大学の齋藤正顕氏et al.との共同研究)。
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