研究実績の概要 |
今年度実施した研究によって、コンパクトリー群による強可視的作用から非コンパクトリー群による強可視的作用を導く方法を得ることができました。 Gを連結コンパクトリー群とし、H及びLをそのレビ部分群とします。このとき、Hによる一般旗多様体G/Lへの作用が強可視的となるような3つ組(G,H,L)を分類せよ、という問題が東京大学の小林俊行教授によって提示され、実際にGがユニタリ群である場合における3つ組の分類が与えられました([T. Kobayashi, J. Math. Soc. Japan 59 (2007)])。その後、論文[Y. Tanaka, Proc. Japan Acad. Ser. A Math. Sci. 88(6) (2012)]においてユニタリ群以外の型のコンパクトリー群に対する分類が示されています。 今年度の研究を通して、上述のように分類されたコンパクトリー群の3つ組(G,H,L)のそれぞれから、Gの複素化Gcの非コンパクト実形G'およびその2つのレビ部分群H'とL'からなる3つ組(G’,H’,L’)を構成したときに、非コンパクトリー群H’による楕円軌道G’/L’への強可視的作用が得られること、すなわち、全実部分多様体となるような群作用のスライスおよびそれと整合的な反正則微分同相写像が得られることが分かりました。ここで、G/Lと自然に同型である複素旗多様体Gc/P(PはLの複素化Lcをレビ部分群とする放物型部分群)はHの複素化Hcの複素球多様体となっており、G’/L’はGc/P上のG’の開軌道になっています。そのため、このH’による作用は複素球多様体への可視的作用となります。
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