研究実績の概要 |
各点で点対称と呼ばれる変換が定義されているリーマン多様体をリーマン対称空間という. リーマン対称空間は球面やグラスマン多様体, 双曲空間などを例として含んでおり, 微分幾何学において重要な研究対象である. また全測地的部分多様体とは測地線の概念を一般化したものである. 「真直ぐなものを考える」という意味で, 全測地的部分多様体は最も基本的な部分多様体のクラスの一つである. 本研究課題ではディンキン指数と呼ばれる不変量を定義し, 応用することによりリーマン対称空間内の部分多様体の分類問題に取り組むものである.前年度までに既約リーマン対称空間内の全測地的部分多様のディンキン指数の整数性の代数的な証明および幾何学的な証明が得られていた. また関連して, 擬リーマン対称空間上の不連続群についての小林固有性判定定理との関連についても調査を行っていた. 当該年度の研究においては等質空間上の群作用の固有性が John Roe の創始した粗空間の幾何学の言葉で解釈できるということを発見し, 小林固有性判定定理が位相群上の粗空間構造の言葉で非常にきれいに説明できるということが分かった. 特に小林固有性判定定理の核となる部分が「簡約型リー群上のカルタン射影は粗同値写像である」という言葉で説明できることが判明し, これは擬リーマン対称空間上の群作用の固有性判定問題に大きな進展をもたらすものと思われる. また関連する発見として, 等質空間上の群作用の固有性を符号理論の言葉で言い換えることができるということも分かった. これらの結果については現在論文を準備しているところである.
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