研究課題/領域番号 |
20K14314
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安本 真士 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 学術研究員 (70770543)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 離散微分幾何 |
研究実績の概要 |
今年度は主に以下の成果を得た. [1] Mason Pember氏(トリノ工科大学),Denis Polly氏(ウィーン工科大学)との共同研究で,多くの離散曲面のクラスに対するWeierstrass型の表現公式を統一的に導出した.これにより,3次元双曲空間,ド・ジッター空間内の離散Bryant型・Bianchi型線形ワインガルテン曲面をはじめとする広い離散曲面に対する表現公式も導出することに成功した.これはHoffmann-Rossman-佐々木-吉田(2012年,Trans. AMS)やRossman-安本(2018年,ASPM)の結果を補填するものであり,従来のWeierstrass型の表現公式を用いた離散曲面からの脱却に成功した.この研究成果をプレプリントにまとめ,現在国際誌に投稿する前の最終確認を行っている. [2] 上記[1]の半離散化に取り組み始めた.これはRossman-安本(2020年,OJM)の結果を補填するものであり,より広いクラスの離散曲面を取り扱うための試金石となる研究である.特定の計量を持つ3次元ベクトル空間内の離散平均曲率零曲面については,離散的な場合と同様の結果が得られることを確かめた. [3] 3次元双曲空間内の離散平均曲率の絶対値が1未満となる離散平均曲率一定曲面の構成法を導出するための準備として,3次元ローレンツ空間型内の離散平均曲率一定曲面の構成法に関する検証を行った.3次元ド・ジッター空間内の特定の場合については考察が終わったが,3次元反ド・ジッター空間の場合については現在も取り組んでいる最中である. これらに加えて,2021年3月に大規模国際会議「可視化の数理と,対称性およびモジュライの深化」を対面とオンラインの併用で開催し,本研究課題に係る最新の研究の情報収集に努めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初初年度に取り組む予定だった3次元双曲空間内の離散平均曲率の絶対値が1未満となる離散平均曲率一定曲面の構成については着手が遅れているが,3次元ローレンツ空間型内の離散平均曲率一定曲面に対する成果がある程度得られた.また,種々の離散曲面に対するWeierstrass型の表現公式が得られたことに加えて,我々の研究を通して,離散的な場合についても梅原-山田型の摂動(1992年,Crelle)が成り立つことが考察されたことから,研究計画に若干の修正は必要なものの,取り組む課題と得られた成果は増えているため,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
まずは初年度に取り組み始めた課題について研究を継続する.半離散曲面に対するWeierstrass型の表現公式の導出,特に3次元双曲空間内の半離散平均曲率一定1曲面の構成法を導出することで,第二ガウス写像と双曲ガウス写像の対応に着目し,微分幾何的な観点から新たな半離散正則関数を見つけられる可能性を秘めている.従来の研究では,比較的初等的な半離散正則関数しか知られていないので,複素関数論の観点からも興味深い研究課題である.また3次元ローレンツ空間型内の離散平均曲率一定曲面についても引き続き研究に取り組んでいく. また,次数3の空間グラフの3次元双曲空間内の離散平均曲率一定1曲面に対する構成およびその連続極限についてはWai Yeung Lam氏(BIMSA,清華大学)が我々と異なるアプローチで既に結果を得ているので,我々との研究の差異および共通点について考察する.現在の新型コロナウイルス感染症拡大の収束状況次第では,Lam氏を招聘する,もしくは研究代表者がLam氏のもとを訪れて研究打ち合わせを行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて,研究代表者自身の今年度の海外出張,および今年度開催予定であった数件の国際研究集会が全て中止となったため,当初使用予定であった海外出張旅費,および外国人研究者招聘費用が全て使えなかったため,次年度使用額が生じた.現時点では2022年1月から3月の間に数件の国際研究集会開催に向けて準備を進めており,外国人研究者招聘旅費,もしくはオンラインで開催する場合は必要となる機材の購入に充てる.さらに今後の状況によっては,研究代表者が海外共同研究者との研究打ち合わせのための海外出張旅費として使用する.
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