完全WKB解析と位相的漸化式の間の架け橋となる量子曲線の理論をもとに、自由エネルギーに起こるStokes現象とBPS構造の関係性や、スペクトル曲線の周期とパンルヴェ方程式の解の挙動の解析を行なった。特に、位相的漸化式の自由エネルギーの漸近展開を求める手法を確立し、その主要項に Riemann 面のモジュライ空間のオイラー標数が現れることなどを示した。正則アノマリー方程式と合わせることで、自由エネルギーの明示的な表示を機能的に求めるアルゴリズムを与えることにも成功した。 研究実施期間中に、位相的漸化式によるBPS構造に付随したRiemann-Hilbert問題の解の構成 (Omar Kidwai氏との共同研究) や、不確定共形ブロックとアクセサリー・パラメータの漸近展開との比較 (名古屋創氏との共同研究) に関する成果も得た。いずれも完全WKB解析、位相的漸化式、パンルヴェ方程式の間の既存の関係性を発展させた成果であると言える。
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