研究実績の概要 |
簡約群Gとその閉部分群Hから定まる等質空間G/Hに対して、G/HがG不変測度をもつとき「L^2(G/H)の既約表現への分解に寄与するGの既約ユニタリ表現の集合が、漸近的にG/Hの余接束からGのLie環の双対空間への運動量写像の像により記述される」という結果をプレプリントとして発表し(Benjamin Harris氏と共著)、現在雑誌に投稿中である。この結果の証明には、普遍包絡環の零化イデアルを用いたL^2関数の既約分解に寄与する表現の代数的制約、半単純軌道の量子化として得られる既約ユニタリ表現の直積分の波面集合の記述を用いた。 また前年度に行った運動量写像の像についての一般的考察に基づき、いくつかの具体例について運動量写像の像を計算した。ひとつの例は G=Sp(n,R), H=Sp(m,R)xSp(k,Z) であり、計算結果から任意のn,m,kに対して、n>mならば離散系列表現が無限に存在することが示された。もうひとつの例は、不定値直交群 G=O(p,q), H=O(p_1,q_1)x...xO(p_k,q_k) である。この場合には、まずO(p,q)とO(p,q-1)の間の半単純軌道の誘導や制限を具体的な行列の固有値の計算に帰着し、その計算をもとにしてG/Hの運動量写像の像を計算を行い、G/Hに離散系列表現が存在するための十分条件を具体的に求めた。この十分条件は必要条件にもなっていることを予想している。実際、Benoist-Kobayashiによる緩増加性とO(p,q)の緩増加表現の記述を用いてgenericなパラメータを含む多くの場合に必要条件になっていることを確かめた。
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