研究課題/領域番号 |
20K14338
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
坂本 祥太 東京工業大学, 理学院, 助教 (10869019)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ボルツマン方程式 / 漸近安定性 / 正則性 |
研究実績の概要 |
本年度は以下の内容に関して研究を行った: 1. 切断型ボルツマン方程式の半空間問題の解の漸近安定性(名古屋工業大学の鈴木政尋氏及びCourant Institute of Mathematical SciencesのKatherine Zhiyuan Zhang氏との共同研究)。本研究では切断型・空間3次元ボルツマン方程式の半空間での初期値境界値問題において、解の一意存在、及び対応する定常問題の解への時間指数漸近(漸近安定性)を証明した。先行研究では空間1次元に簡略化した問題で同様の問題が考察されていたが、その場合対応する定常問題が常微分方程式として考えられるため、解の存在証明が1次元固有のものとなり、定常問題が偏微分方程式となる空間3次元の場合に直ぐには適用できないという困難があった。これを、鈴木氏及びZhang氏のオイラー・ポアソン方程式に関する先行研究をはじめとして開発された、非定常問題の時間周期解から定常解を構成するという手法を用いて解決し求める結果を得た。申請者は主にその手法をボルツマン方程式へ適用する際に現れる固有の項の扱いに関する手法に関して担当した。本研究をまとめた論文は学術雑誌に投稿中である。 2. 非切断型ボルツマン方程式のウィーナー空間における解の滑らかさに関する研究(香港中文大学のRenjun Duan氏との共同研究)。本研究では非切断型ボルツマン方程式のウィーナー空間中の解(Duan氏らとの先行する共同研究で得たもの)の正則性に関して考察した。この回に関しては、方程式の特異性を表す指数sを用いて、指数1/2sのジュヴレ空間に値を取ることが予想されているが、先行研究では+1の正則性損失がある。これを解決するためより単純なモデルに関して、擬微分作用素によるアプローチによって解の正則性がどうなるかを考察中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「概要」欄における研究1については、当初予定していた方向とは異なる研究ではあるがボルツマン方程式の関連する新たな問題に対して着手し論文としてまとめることができたため進展している。研究2に関してもモデル方程式の基本的な解析方針が定まったため、進展している。
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今後の研究の推進方策 |
「概要」欄における研究1について、今後は以下の方向で研究を進める:(a) より複雑な積分核を持つ場合への結果の拡張。今回行った研究では積分核が最も単純な場合しか扱っていないが、先行研究では空間1次元の場合に積分核がより一般の場合にも類似の結果を得ている。そのためその証明手法を参考にすることによって、我々の結果もそのような場合に拡張可能であることが予想される。この場合、一般の積分核が持つ増大度ないし減少度を相殺するような重み関数の導入が証明の鍵となるため、先行研究からどのような重み関数が最適か考察して我々の証明を組み合わせることによって結果を得る。(b) 他の方程式への応用。特にヴラソフ-ポアソン-ボルツマン方程式への応用を考えている。この方程式はボルツマン方程式とポアソン方程式の連立方程式で、特にポアソン方程式の与えるポテンシャル関数の評価が重要となる。現在この項の評価方法について考察中である。 研究2について、擬微分作用素論を用いた評価、特に軟化子を用いた交換子評価に関する考察を継続する。モデル方程式に関してこの評価を完成させたのち、先行研究で用いられたボルツマン方程式の線形項のワイル量子化を用いた表現とその評価を組みあわせて、元のボルツマン方程式に適用可能かどうか、困難があるとすればどのような点か考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍において国内外への研究集会への出席や研究打ち合わせのための出張ができなかったため、繰り越しが生じた。状況が好転し年度中の出張が可能となればそのために繰越金を利用し、そうでなければ研究に必要な書籍やPCを整備するために利用する。
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