研究実績の概要 |
本研究の目的は一階微分項に非有界係数を持ち, 非斉次項が非等方性を持つルベーグ空間Lp,q(空間指数をp, 時間指数をqとする)に属する完全非線形放物型方程式に対する粘性解理論を構築及び整備することである. 令和2年度は, 二階微分項に関して凸性を持たない完全非線形放物型方程式のLp粘性解に対するC1,α評価(空間1階微分のヘルダー評価)及びW2,p評価(空間2階微分の可積分性)を考察した. また, これらの応用として, 数理ファイナンスや微分ゲームにおける近似最適制御を考察した.
二階微分項係数の空間変数に関するVanishing Mean Oscillation(以下, VMO)条件の下, 2人のプレイヤーの確率微分ゲームから現れるIsaacs方程式を含む完全非線形放物型方程式のLp粘性解に対してC1,α評価を, 主要部に時間変数の不連続性を持つ方程式に適切な弱解を導入することで証明した. この結果を査読付き論文雑誌に投稿し, 現在査読者のコメントに沿って修正した原稿を再投稿中である. また, この手法をVMO係数を持つ完全非線形放物型方程式のLp粘性解のW2,p評価を得るために, Caffarelli(1998年)の手法について, 既存の結果を精査した. 更に, 将来的にこれらの評価を用いて, 近似最適制御を含む微分ゲームや数理ファイナンスへ応用するために, 既存の結果を精査した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
粘性解の正則性理論において, 既存の結果を一般化するためには, Caffarelliの手法の改良, もしくは粘性解理論の新たな手法の発見が必要となる. 令和2年度は主に前者を目標とし, 実際にVMO係数を持つ方程式にCaffarelliの手法を適切に改良できた. 令和2年度は, 粘性解の正則性理論の解析には必須となるCaffarelliの手法の精密化をまず集中して行ったため, 進展は「やや遅れている」とした.
|
今後の研究の推進方策 |
今後も研究計画に従い, 非斉次項が非等方性を持つルベーグ空間Lp,q(空間指数をp, 時間指数をqとする)に属する完全非線形放物型方程式に対する粘性解理論を構築及び整備することを目標とし, 研究を継続する. 具体的には, 令和3年度の研究実施計画にある通り, Lp,q関数を非斉次項として持つ完全非線形放物型方程式に対するLp,q粘性解の定義及びその適切性(特に, 解の存在及び安定性)を示す. また, Lp,q関数を非斉次項として持つ完全非線形放物型方程式に対してABP最大値原理及び弱ハルナック不等式を確立する. この時, 超関数解論と比べて指数p, qの条件がより強くなる可能性があるが, その場合Lp,q粘性解特有のものであればそれを示す.
|