研究実績の概要 |
本研究の目的は一階微分項に非有界係数を持ち, 非斉次項が非等方性を持つルベーグ空間Lp,q(空間指数をp, 時間指数をqとする)に属する完全非線形放物型方程式に対する粘性解理論を構築及び整備することである. 令和3年度は, Lp,q関数を非斉次項として持つ完全非線形放物型方程式に対するLp,q粘性解の定義及びその適切性(特に, 解の存在及び安定性)を考察した.
VMO係数を持つ放物型アイザックス方程式のLp粘性解に対する空間一階微分のヘルダー評価を示した. VMOとはVanishing Mean Oscillationの略で, VMO条件とは有界変動平均条件において球上の積分平均が半径と共にゼロに収束することである. 一方, アイザックス方程式とは2人のプレイヤーの確率微分ゲームから現れる方程式であり, 2階微分項に関して非凸な方程式である. 本研究では, 粘性解理論を改めて整備することで, 既存の研究で扱った方程式のLp粘性解の正則性について調べた. なお, この内容は単著論文として国際専門雑誌「Partial Differential Equations and Applications」に受理された.
完全非線形放物型方程式に対する両側障害問題のLp粘性解の同程度連続性評価, 存在定理及び空間一階微分のヘルダー評価を示した. Shahgholian(2008)により片側障害問題の粘性解の空間1階微分の評価が与えられており, その証明の鍵は, 背理法によりバリア関数を具体的に時空変数の多項式で与えることで矛盾を導くというものであった. この論法の改良を行い適用範囲を広げ, 楕円型に対応する放物型方程式を扱えるようにした. この内容は単著論文として国際専門雑誌「Journal of Differential Equations」に受理された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
粘性解の正則性理論において, 既存の結果を一般化するためには, Caffarelliの手法の改良, もしくは粘性解理論の新たな手法の発見が必要となる. 令和3年度は, 粘性解の正則性理論の解析には必須となるCaffarelliの手法の精密化を集中して行ったため, 進展は「やや遅れている」とした.
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今後の研究の推進方策 |
今後も研究計画に従い, 非斉次項が非等方性を持つルベーグ空間Lp,q(空間指数をp, 時間指数をqとする)に属する完全非線形放物型方程式に対する粘性解理論を構築及び整備することを目標とし, 研究を継続する. 具体的には, 令和3年度の研究実施計画にある通り, Lp,q関数を非斉次項として持つ完全非線形放物型方程式に対するLp,q粘性解の定義及びその適切性(特に, 解の存在及び安定性)を示す. また, Lp,q関数を非斉次項として持つ完全非線形放物型方程式に対して ABP最大値原理及び弱ハルナック不等式を確立する.
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