研究課題
令和3年度の研究では,次の2つの成果を得た.1つ目は,微分型非線形シュレディンガー方程式系の初期値問題に関する適切性の研究である.ラプラシアンの係数の条件により,先行研究では,初期値問題が適切となる初期値のソボレフ指数と逐次近似法を用いて適切性を証明できる指数との間にギャップがあった.令和3年度の研究では,そのようなギャップをほとんど埋めることに成功した.ルーミス・ホイットニー型の不等式を用いることで,角度に応じた相互作用をより精密にとらえることができた.特に,逐次近似法を用いて適切性が得られる可能性のある指数は端点のみとなり,本研究で得られた結果は,ほぼ最良な結果である.(平山浩之氏,木下真也氏との共同研究)2つ目は,4階非線形シュレディンガー方程式の解の漸近挙動に関する研究である.非線形項が4次で,微分を1つ含むような散乱の意味で臨界な非線形項の考察を行った.初期値が小さければ,時間大域的に解が存在し,自己相似解が漸近形の主要部になることを,4階シュレディンガー方程式に対応する波束を構成して証明した.また,先行研究で行われていた初期値の正則性・減衰よりも弱い仮定の下で,解の漸近形が得られた.非線形シュレディンガー方程式や修正KdV型方程式の漸近形の研究では波束を用いた議論が適用されていたが,本研究では,高階のシュレディンガー型方程式でも同手法が適用可能であることが確認できた.(瓜屋航太氏との共同研究)
2: おおむね順調に進展している
微分型非線形シュレディンガー方程式系の初期値問題の適切性について,逐次近似法を用いる限りはほぼ最良の結果が得らたことに加え,散乱の意味で臨界な4階非線形シュレディンガー方程式の漸近挙動を決定したので,おおむね順調に進展している.
対面での討論を通して研究の推進を行う予定だったが,今後の社会情勢によっては,オンライン形式での討論などを活用して,本研究課題に取り組む.
新型コロナウィルス感染症の影響により,予定していた出張がすべて行えなかったため,次年度使用額が生じた.研究推進のための物品の購入,出張や招聘が可能になれば旅費として使用する予定である.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件)
Journal of Mathematical Analysis and Applications
巻: 499 ページ: 125028~125028
10.1016/j.jmaa.2021.125028
Journal of Evolution Equations
巻: 21 ページ: 4897~4929
10.1007/s00028-021-00737-8