(1) M. Hamza氏(Imam Abdulrahman Bin Faisal University)と吉川周二氏(大分大学)との共同研究で、2つの時間変数係数をもつ非線形の消散型梁方程式に対し、時間大域解の存在および漸近挙動について研究を行なった。係数関数がある程度大きく、線形解が対応する熱方程式の解に近い挙動をする場合を考察し、重みつきSobolev空間の枠組みで小さな初期値に対する時間大域解の構成と、解が時間無限大において、係数から決まる時間スケーリングを施した熱核に漸近することを証明した。証明にはGallay-Raugel(1998年)により導入された scaling variables とよばれる変数変換を使い、解から漸近形を引き抜いた剰余項のみたす微分方程式系に対して重み付きエネルギー法を適用する手法を用いた。この手法を梁方程式に適用する際、空間重み付きのエネルギーと方程式の4階微分から高階微分と重み両方を含む振る舞いの悪い項が現れるが、本研究ではもう一段高い導関数に対するエネルギー評価を導き組み合わせることでこの悪い項を制御し、必要な評価を得ることができた。 (2) 定数係数の非線形消散型波動方程式に対して、Todorova-Yordanov(2001年)、Ikehata-Tanizawa(2005年)で導入された指数関数型の重み付きエネルギー評価を改良した多項式型の重み付きエネルギー評価を導入し、既存の結果の別証明を与えた。多項式型の重み関数を用いる場合、非線形項に多項式型の重みが入った項を評価する必要が生じるが、本研究ではCaffarelli-Kohn-Nirenbergの不等式を用いて非線形項の重み付きノルムを評価することで、時間大域解の存在を示すのに必要なアプリオリ評価を導出した。
|