研究課題/領域番号 |
20K14348
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
相木 雅次 東京理科大学, 理工学部数学科, 講師 (90734400)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 渦糸 / 渦輪 / 衝突 / 数学解析 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,「①翼端渦」と「②渦輪の追い越し」という2つの現象の数学的定式化及びその数学解析を行うものである.また,2つの現象に共通する課題として「③特徴的な解の安定性解析」も同時に遂行する.2020年度においては,まず②に関して(当初の計画とは違うものの)成果を得たので報告する. ②の研究においては,研究代表者が新たに考案した数理モデル(以後,新モデル)を用いて軸上にならんだ2つの渦輪の挙動を表す問題について数学解析を行った.その結果,2つの渦輪の衝突に関する結果を得た.具体的には,偏微分方程式系として表される新モデルにおいて2つの渦輪が互いに向かって進むような状況設定をした際に2つの渦輪が衝突することに対応する解が存在することを証明した.また,衝突は必ず発生するわけではなく,衝突が発生するための必要十分条件を導出することにも成功した.この条件は,渦輪の初期配置や渦の強さなど,物理的なパラメータ等に対する条件として表現されており,数学的な意義だけでなく,物理的な渦輪の衝突に対する現象の理解にも寄与するものである.また,衝突しない場合もいくつかの運動パターンを解明することに成功した.これら成果を関連する研究集会において発表した. さらに,③について,新モデルの追い越し現象に対応する厳密解の安定性解析に着手した.その結果,厳密解の安定性(あるいは不安定性)を証明する第一歩として,新モデルの線形化方程式に対するエネルギー評価を導出することに成功した.これによって直ちに厳密解の安定性(あるいは不安定性)が解明されるわけではないが,今後の研究を遂行する上での指標となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題②については,一定の研究成果を得られたものの,課題①については進捗がないため,やや遅れているとした.主な理由としては,2020年度は,新型コロナウイルス感染症に関する様々な対応を本務において行う必要があり,当初予定していたエフォートの割合(50%)を研究課題に取り組むために配分できなかったことが挙げられる.
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症対策を実施した上での本務における業務を1年間経験し,作業効率が上がってきたため,今後は研究計画に沿って研究を推進できる見通しである. 具体的には,①の研究課題に着手する.KMDモデルに基づいた問題設定を行い,得られる偏微分方程式系の可解姓の証明に取りかかる.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は,新型コロナウイルス感染症の影響により,出席する予定であった学会・研究集会の多くが中止となり,開催された一部についてもオンラインでの開催となった.そのため,オンラインでの学会発表・意見交換を円滑に実施するための設備を購入したが,当初想定していた旅費による支出が発生しなかったため,次年度使用額が生じた.
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