本研究課題は,「①翼端渦」と「②渦輪の追い越し」という2つの現象の数学的定式化及びその数学解析を行うものである.また,2つの現象に共通する課題として「③特徴的な解の安定性解析」も同時に遂行する.2023年度は,②と③に関連した研究成果を得たので報告する. 研究課題②においては,研究代表者が新たに考案した数理モデルを用いて軸上にならんだ渦輪の挙動を表す問題について数学解析を行った.当初の研究計画に おいては,2つの渦輪が並んだ状況を想定していたが,軸上に渦輪が3つ並んだ状態へと問題を拡張した.2022年度に引き続き,3つの渦輪の運動の数値計算を続け,22年度の時点ではカオス的な振る舞いのように見えていた解の挙動がカオスではなく概周期的な振る舞いである可能性が高いことが分かった. 研究課題③は,複数の渦輪の運動の安定性に関する研究であるが,その足掛かりとして単独の渦輪の運動の安定性に関して研究を進めた.その結果,弧状渦糸の運動の安定性に関する研究結果の応用として,渦糸の運動と密接に関係のある非線形シュレディンガー方程式の解の安定性に関する結果を得ることができ,学術誌へ掲載された.また,弧状渦糸の運動の安定性とその応用として得られる単独の渦輪の運動の安定性に関する研究成果をまとめたものを論文として学術誌へと投稿した. 研究期間全体を通して,課題①,②,③に取り組んできた.課題①については,特筆すべき研究成果を得ることができなかったが,課題②と③に関しては,論文2編として発表した研究結果を得ることができた.当初の研究計画とは異なる部分もあるが,本研究課題に関して一定の結果を得ることができたと言える.
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