研究課題/領域番号 |
20K14357
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柏原 崇人 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (80771477)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ナビエ・ストークス方程式 / プリミティブ方程式 / 領域摂動誤差 / 不連続ガレルキン法 |
研究実績の概要 |
(1) 大気や海洋のように、水平方向のスケールが垂直方向のスケールよりも大きな場合(数学的にはアスペクト比0の極限において)、流体の運動を表すナビエ・ストークス方程式から静水圧平衡を満たすプリミティブ方程式が導出される。この議論の数学的正当化は、周期境界条件の場合について知られていた。我々は物理的により重要な滑りなし条件の場合でも同様の結果を得ることができた。 (2) 不連続ガレルキン(DG)法は有限要素法の一種で、隣り合う要素間で不連続な基底関数を許容することにより、自由度の高い近似空間を実現する手法である。近似したい偏微分方程式の解は要素間でも滑らか(連続)になるものを想定するが、連続性の条件は関数空間でなく弱形式にペナルティー項として反映されているという特徴がある。通常のDG法のスキームでは各要素がつぶれていないという正則性条件が必要だったが、我々は外接半径条件という緩いメッシュ条件で通用するDG法のスキームを開発することに成功した。 (3) 領域内部と境界上で楕円形偏微分方程式を考え、それら2つがノイマン作用素を通じて相互作用するモデルを一般化ロバン境界条件という。一般化ロバン境界条件は、流体構造練成問題の次数低減モデルや、近年注目を集める動的境界条件問題に対するプロトタイプとして登場し、曲がった境界を持つ一般領域における理論数値解析の結果を確立することは重要な課題となっている。我々は、曲がった境界を多角形近似することで生じる領域摂動も考慮し、有限要素法の誤差評価を導くことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)について、プリミティブ方程式に対する滑りなし条件問題は周期境界条件よりも本質的に難しいことが多く、その状況で静水圧平衡の正当化ができたことは重要である。 (2)について、メッシュの正則性条件は、通常の有限要素法の解析では必ずしも必要でないことが近年指摘されていた。本研究の結果は、この事実が不連続ガレルキン法の場合にも拡張できることを示唆するものであり、重要な意味を持つと考えている。 (3)について、我々の誤差評価は近似領域において行っており、実際の数値計算の状況を考慮している。この結果は研究実施計画に掲げていた目標の一つであり、概ね順調に研究を進めることができていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず(3)の結果を論文にまとめて国際誌に投稿することを目標にする。さらに、動弾性体の接触・摩擦問題に対する適切性、放物型方程式に対する時間不連続ガレルキン法の最良誤差評価、非ニュートン流体の一種であるBinghamモデルに対する適切性といった研究課題の考察を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度も新型コロナウイルス感染症の影響が続き、旅費の支出が国内1件・海外0件と非常に少なかったため、次年度使用額が生じた。対面による通常の研究活動が再開されるのに伴って、国内旅費への支出は増加する見込みである。ただし、海外出張については2022年度も見送る可能性がある。
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