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2022 年度 実施状況報告書

一細胞データから遺伝子の制御構造を定量推定するための確率・統計理論の構築

研究課題

研究課題/領域番号 20K14361
研究機関大阪大学

研究代表者

飯田 渓太  大阪大学, 蛋白質研究所, 准教授 (10709653)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード確率過程 / 遺伝子発現 / シングルセル
研究実績の概要

2022年度は、遺伝子発現の確率モデルの生物パラメータの推定問題に取り組み、原核生物および真核生物のシングルセル遺伝子発現データから、分子の崩壊係数以外のすべてのモデルパラメータ(転写のオンオフの遷移確率、最大転写効率、転写バーストサイズ)をロバストに同時推定する方法を開発した。これまでは、転写のオンオフの遷移確率のみが推定の対象であったが、この方法では最大転写効率などが公開データなどから事前にわかっている遺伝子にしか適用できなかった。そこで、ベイズ事前確率を導入し、さらにモデルパラメータに細胞間での多様性を考慮することで、事前知識の必要性を大幅に緩和することができた。その結果、従来以上の推定精度を実現することができ、確率モデルとパラメータ推定法の汎用性が向上した。今後は、単一細胞RNAシークエンスや空間トランスクリプトームなどの網羅的な遺伝子発現データからも生物パラメータを推定する問題に挑戦する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年度は本研究の応用範囲を広げる上で重要な数理的発見があり、次の生物学的課題も明確となった。そのため、順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

最終年度は、本研究で開発した遺伝子発現の確率モデルとパラメータ推定法を用いて、単一細胞RNAシークエンスや空間トランスクリプトームなどの網羅的な遺伝子発現データから生物パラメータを推定する問題に挑戦する。従来の単一細胞トランスクリプトームの分類手法は、ほとんどが発現量にもとづくものであった。しかしながら、発現量のみにもとづく生物学的解釈は単一的にならざるを得ず、生命の複雑性を捉えるには、転写調節、細胞内シグナリング、生化学プロセスなどの複数の観点からのデータ解析が必要である。本研究では、シングルセルデータから転写のオンオフ確率をゲノムワイドに推定できるだけの汎用的な方法を開発することで、転写調節の観点から細胞分類を行うことを目指す。ベイズ推定における高速かつ高精度な計算方法を確立することは今後の優先課題である。推定したパラメータの妥当性については、申請者の所属する大阪大学蛋白質研究所細胞システム研究室の実験系メンバーらと議論する予定である。

次年度使用額が生じた理由

2022年度は情報収集および成果発表のための学会等がオンライン開催になったため、予定していた旅費を使用することができなかった。次年度は、論文としての成果発表およびソフトウェア開発のために予算を使用する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] ASURAT: functional annotation-driven unsupervised clustering of single-cell transcriptomes2022

    • 著者名/発表者名
      Iida Keita、Kondo Jumpei、Wibisana Johannes Nicolaus、Inoue Masahiro、Okada Mariko
    • 雑誌名

      Bioinformatics

      巻: 38 ページ: 4330~4336

    • DOI

      10.1093/bioinformatics/btac541

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 遺伝子発現調節の確率モデリングとパラメータ推定2023

    • 著者名/発表者名
      飯田 渓太
    • 学会等名
      若手数学者交流会2023
    • 招待講演
  • [学会発表] 遺伝子発現の1細胞データ解析2022

    • 著者名/発表者名
      飯田 渓太
    • 学会等名
      日本数学会
    • 招待講演
  • [学会発表] Clustering single-cell and spatial transcriptomes through multifaceted biological aspects2022

    • 著者名/発表者名
      Keita Iida
    • 学会等名
      1st International Symposium on Aihara Moonshot Project
    • 国際学会
  • [図書] 生体の科学 2023年 4月号 特集 未病の科学2023

    • 著者名/発表者名
      飯田 渓太
    • 総ページ数
      97
    • 出版者
      医学書院
  • [図書] 空間オミクス解析スタートアップ実践ガイド2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木 穣
    • 総ページ数
      244
    • 出版者
      羊土社
    • ISBN
      9784758122610

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公開日: 2023-12-25  

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