研究課題/領域番号 |
20K14370
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小谷野 由紀 東北大学, 理学研究科, JSPS特別研究員(PD) (50849643)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 拡散 / 流体力学 / フォッカープランク方程式 |
研究実績の概要 |
これまで、往復的な流体場によって拡散が促進されることが明らかとなってきた(Koyano et al. Phys. Rev. E 2020)が、拡散係数や流速場の振幅によっては、拡散の促進より異方的な拡散の方が支配的なダイナミクスである場合があることが数値計算より明らかになった。今回見つかった異方的な拡散は、例えばデルタ関数状の初期分布があったとき、三ツ矢のような120度ずつの3方位に拡散が大きくなり、その3方位のちょうど間で拡散が抑えられるといったものである。この異方的な拡散を説明するため、4次のモーメントまで考慮した離散的なフォッカープランク方程式を考えた。これまでも離散的なフォッカープランク方程式を考えていたが、今回新たに4次のモーメントまで考慮した。解析計算の結果、3次のモーメントの項の効果によって三ツ矢状の異方的な拡散を説明することができた。拡散促進の効果は、拡散係数に比例し、流動場の振幅の2乗に比例する。一方、異方拡散の効果は、拡散係数の2乗に比例し、流動場の振幅に比例する。よって、相対的に拡散係数が小さく流動場の振幅が大きいパラメータ領域では拡散の促進が、拡散係数が大きく流動場の振幅が小さいパラメータ領域では異方的な拡散が見られる。さらに、異方的な拡散が起きるには、流速場に空間的な依存性がある必要があることが明らかとなった。具体的には冪関数にして3乗以上の依存性が必要である。例えばハーゲン・ポワズイユ流れでは異方的な拡散は見られないことがわかり、マイクロ流路内部で往復振動流を誘起した場合には、拡散の促進のみを考えれば良い。以上の結果は現在論文原稿にまとめている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの成果(Koyano et al. Phys. Rev. E 2020)を踏まえ、新たに異方的な拡散という現象を発見し、そのメカニズムの解明に成功しているからである。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでは往復的な流動場と拡散のダイナミクスが協同する現象を調べてきた。今後は、これまでの結果をより一般的に拡張するため、様々なタイプの流動場を考慮したい。次年度はまず、往復的ではないが周期的な流動場、すなわち、回転のあるような流速場について考察を行いたい。実際に、周期的な流動場について、周期毎の離散的なフォッカープランク方程式を導出し、往復的な流動場の場合の離散的なフォッカープランク方程式との差分を議論する。時間的な余裕があれば、周期性のない流動場の場合についても数値計算を用いて考察を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の状況を受けて、参加予定だった国際・国内の研究会が中止またはオンライン開催となり、旅費がかからなかったため次年度使用額が生じた。数値計算に必要な計算機を増設し、研究をより一層加速させる予定である。
|