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2021 年度 実施状況報告書

強くエンタングルした状態の数値シミュレーション:行列積表現によるサンプリング

研究課題

研究課題/領域番号 20K14377
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

後藤 慎平  東京医科歯科大学, 教養部, プロジェクト助教 (90754739)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード数値シミュレーション / 量子多体系 / 行列積状態 / 乱択サンプリング
研究実績の概要

行列積状態と乱択サンプリングを組み合わせた手法として、研究代表者らはMarkov連鎖を使用しない擬一次元有限温度量子多体系のシミュレーション手法を提案し、論文発表を行った (S. Goto et al., Phys. Rev. B 104, 045133)。この提案手法は、あえて計算量が必要となるエンタングルした状態を使用した方がサンプリング効率が向上し、全体の効率化につながるという発見に基づいている。そこでこの発見から発展して、将来的に誤り耐性のある量子計算機を用いることを見越し、エンタングルメントによるコストの上昇をあえて考慮しない状況でどこまでサンプリング効率が上昇するかについても調べた。その結果、系のサイズに比例したユニタリ演算回数で、局所的な期待値が熱力学的な期待値に一致する純粋状態を与える thermal pure quantum state 法 (TPQ法) に匹敵するサンプリング効率を達成する状況を見出した。こうした手法のサンプリング効率は物理量のサンプル依存性に関係しており、TPQ法の特徴として系のサイズの増大に伴い効率が上昇することにある。我々が見出した状況もまたこの性質を持ち、このことは十分に系が大きい時には実質的にサンプリングを取る必要がなくなることを意味しており、量子計算機が実用化した場合には有力なアプローチとなる可能性がある。この成果は日本物理学会第77回年次大会で報告し、また現在論文を準備中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

行列積状態と乱択サンプリングを組み合わせた実用的な手法を提案し論文発表できたことに加え、そこからさらに発展して量子計算機上で有効な可能性があるアプローチもまた提案することができたたため。

今後の研究の推進方策

今回発見した量子計算機上で有効な可能性があるアプローチはスピン1/2の一次元系でしか有効性を確認しておらず、また一般論があるわけでもない。擬一次元系などの他の系での有効性の確認や一般論の構築を目指したい。また最終年度ということで得られた成果を発表していくことにも注力する。

次年度使用額が生じた理由

COVID19により出張を伴う国際学会や国内学会が相次いで現地開催が中止となり、旅費をほとんど使用することができなかった。次年度については国内出張は復活の兆しがみえるものの、海外出張についてはCOVID19だけでなく国際情勢の不安定化も伴いかなり厳しいことが予想される。そのため、海外出張旅費に当てる予定だった予算を用いて大型計算機をもう一台購入し、研究をより推進していくことを検討している。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Transition between vacuum and finite-density states in the infinite-dimensional Bose?Hubbard model with spatially inhomogeneous dissipation2022

    • 著者名/発表者名
      Asai Shiono、Goto Shimpei、Danshita Ippei
    • 雑誌名

      Progress of Theoretical and Experimental Physics

      巻: 2022 ページ: 033I01

    • DOI

      10.1093/ptep/ptac011

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Matrix product state approach for a quantum system at finite temperatures using random phases and Trotter gates2021

    • 著者名/発表者名
      Goto Shimpei、Kaneko Ryui、Danshita Ippei
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 104 ページ: 045133

    • DOI

      10.1103/physrevb.104.045133

    • 査読あり
  • [学会発表] ランダムサンプリングを用いたトレース評価の効率の改善とそのシステムサイズ依存性2022

    • 著者名/発表者名
      後藤慎平, 金子隆威, 段下一平
    • 学会等名
      日本物理学会第77回年次大会

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公開日: 2022-12-28  

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