研究課題/領域番号 |
20K14379
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
小林 和也 東京都立大学, 理学研究科, 客員研究員 (00849474)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 粉粒体 / 重力不安定性現象 / 物理ゲル |
研究実績の概要 |
本研究では,まだ未解明な部分が多く,これまで個別的に取り扱われることが多かった粉体系における重力不安定性現象に着目して研究を行なっている.重力不安定性現象に関する研究は,液体系においてはこれまでに様々な調査が行われているが,粉体系ではあまり多くはない.そこで本研究では,粉体系において,応力鎖がネットワーク構造を形成してパーコレートしていることに着目した.似たような系として,加熱や冷却によって可逆的に固体状態のゲルと液体状態のゾルに転移することができ,さらに高分子鎖が同じようにパーコレートした系である物理ゲルの性質に着目し,この両者における重力不安定性現象を系統的に調査することによって,ダイナミクスの普遍性を明らかにすることを目的としている.なお,本研究課題は前年度に採択されて現在も併行して実施中の課題番号[19K23428]と相補関係にあり,高い相乗効果が得られている. 本年度の研究実績について述べる,粉体系では,これまでの実験結果の解析によって,砂の詰まり具合(充填率)が不安定化挙動に影響を与えている可能性があることが明らかになった.これまでは充填率は制御せずに実験を行なっていた.そこで粉体の充填率を制御するために,粉体を実験セルに充填する際の実験セットアップに一部改良を加えることによって,粉体の充填率をいくつかに分けて制御することを可能にした.この改良装置を用いて,充填率を変化させたときのパターン変化について詳細に調査を行なった.さらに,ゲル系における重力不安定性現象についても,前年度の実験に引き続き,加熱温度や上下の組み合わせといった条件を系統的に変化させた実験を実施した.そして,波長や指状パターン等のパラメータの時間変化など,さらに多くの定量的データを得ることに成功している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
並行する課題番号[19K23428]の昨年度の研究成果をもとに行った実験データ解析を通して,粉体系では砂の充填率が現象に重要な役割を果たしている可能性があることが明らかになった.そこで,実験セットアップを一部改良することによって,粉体系の充填率を実験的に制御することを可能にした.この実験装置によって,いくつかの充填率における粉体系の新しい実験データを取得することに成功した.この充填率を変化させた際の結果は,ゲル系においては加熱温度を変化させた際の変化に類似していることが明らかになった.従って,粉体系において充填率を制御することは,ゲル系および液体系との共通性を明らかにするために重要な因子であることが明らかになった.これらの状況を踏まえて,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
現在,空気中における粉体の重力不安定現象に関しては,実験方法に関しても順調に進展しており,充填率の制御も含めて予定通りに研究が進められている.一方で,例えば液体中の粉体粒子の沈降といった,空気以外の実験はあまり詳細に実施できておらず,粘性といったパラメータを制御しながら,空気中と同様に解析をする必要があると考えている.さらに,粉体粒子に関しても,粒径等などについて検討する必要がある.そして,これまで得られた粉体系およびゲル系の成果をもとに,詳細な解析によってゲル系および気体粉体の重力不安定性のメカニズム解明への手がかりを得ることを目指す.特に,両者の解析からスケーリング則を導出することを計画している.研究成果について国内外の学会での発表および論文の執筆を計画している.なお,これらの成果および今後の予定は,本研究課題と併行して実施中の課題番号[19K23428]とも相補関係にある.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルスの感染拡大に伴って,当初計上していた予算の使用に大幅な変更が生じた.特に,大学入構規制に伴った研究活動(主に実験)の自粛,感染拡大防止の観点から,多くの学会の中止や延期,オンライン形式への変更によって,当初予定していた予算の執行も予定通りに行えなかった.さらに,年度末における研究機関移動もあり,これまでの必要経費の多くは並行して進行中の課題番号[19K23428]より執行した.一方で,今年度は,新型コロナウイルスに対する対応もすでに考慮され,多くの各学会がオンラインまたはハイブリッドによって実施の方向であるため,当初の計画通りに予算を執行する予定である.また,異動先の研究機関において,実験等も円滑に行えるように準備を整えるため,今年度より予算は予定通り執行できる予定である.
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