研究課題/領域番号 |
20K14390
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
平山 元昭 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, ユニットリーダー (70761005)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | トポロジカル相 / 物質探索 / 第一原理計算 / 電子構造 / Weyl半金属 |
研究実績の概要 |
バンド構造やそのスピン軌道下での変化などを俯瞰しただけでは分からないトポロジカル相について研究を行った。 昨年度は、高次トポロジカル絶縁相についての研究論文を出版した。高次トポロジカル絶縁相は近年研究が急速に拡大しつつあるが、現実的な物質での提案が乏しい。相対論的効果の強い系(スピンフル系)では、スピン軌道相互作用の有無によるバンド反転が容易に検討可能であるが、相対論的効果の弱い系(スピンレス系)のバンド反転では他の観点で検討が必要になる。 代表者らは、ヒンジに量子化された電荷を持つ三次元高次トポロジカル結晶絶縁相の現実物質の初めての提案を行った。具体的な物質としては、アパタイトの電子化物を対象とした。アパタイトは地球上にありふれた鉱物であり、還元処理をすることで、陽イオンに囲まれた1次元の空洞を持つ電子化物となる。対象のA6B4(SiO4)6の構造を持つアパタイトは、バルクとしては絶縁体であり、表面もまた絶縁体である。しかしながら、バルクの波動関数の非自明なトポロジーにより、ヒンジに量子化された電荷が出現する。本研究では、バルクの波数空間の情報とヒンジの量子化電荷の間の関係式も導出した。本研究では同時に、トポロジカル電子化物の分類と、新たな物質提案も行った。1つの例は、代表的なDirac半金属であるNa3Biである。従来Na3Biのバンド反転は、NaのBiに対するバンドに起因すると考えられてきたが、代表者は空隙電子がバンド反転を担っていることを示した。 また、共同研究として、フェルミ準位近傍におけるトポロジカルな線状の縮退(=ノーダルライン)の存在と異常Nernst効果の関連についての論文も出版を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までに、ヒンジに量子化された電荷を持つ三次元高次トポロジカル結晶絶縁相の現実物質の初めての提案を行っている。高次トポロジカル相の研究は近年過熱しているが、現実的な物質系に乏しい。代表者らは、高次トポロジカル結晶絶縁相の具体的な物質として、代表的な鉱物であるアパタイトの電子化物を対象とした。アパタイトを還元処理をすることで、陽イオンに囲まれた1次元の空洞を持つ電子化物となる。対象のアパタイトは、バルクとしては自明な絶縁体である。表面もまた絶縁体であるが、バルクの波動関数の非自明なトポロジーにより、ヒンジに量子化された電荷が出現する。電子化物は、空隙に浮かんだ電子を表面やヒンジで切断することが出来るため、各種トポロジカル相と相性が良い。本研究では同時に、トポロジカル電子化物の分類と、新たな物質提案も行った。1つの例は、代表的なDirac半金属であるNa3Biであり、代表者は空隙電子がバンド反転を担っていることを示した。また、共同研究として、フェルミ準位近傍におけるノーダルラインの存在と異常Nernst効果の関連について論文にまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
電子状態における特異なスピン構造やそれに起因するトポロジカル相の検討を行う。対象としては超伝導などの通常状態以外の相なども含める。物質系としても、通常の無機物質に留まらず、化学や材料分野を横断する物質系を検討する。その一例である電子化物についても、非従来型の電子構造を持つ現実物質を提案したい。物質の検討は第一原理計算を用いて行い、場合によっては構造最適化や安定性の議論を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナにより国内外の旅費などが無くなったため、その分の研究費を次年度に繰り越すことにした。
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