研究課題/領域番号 |
20K14392
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
増山 雄太 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主任研究員 (00814790)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 量子センサー / NVセンター / 磁性ナノ粒子 / ダイヤモンド / 量子センシング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ダイヤモンド量子センサにより、生体内に注入した微量の磁性粒子を検出する手法を開発することである。近年、磁性粒子の医療応用が実用化され始めており、体内に注入した磁性粒子が期待した位置へ集積する量などを検出する必要が生じている。磁性粒子の位置特定のためには、高感度な磁気センサが必要である。しかし、従来の冷凍機を用いた超伝導磁気センサ(SQUID)などは大型で高価なため、技術普及・発展の妨げとなる。そこで、室温・磁気シールドレスで動作する小型なダイヤモンド量子センサを用いた手法を開発する。 2021年度は、ダイヤモンド量子センサーの高感度化を目指して、ダイヤモンド中のNVセンターの評価システムの構築および最適な形成条件の調査を行った。具体的には、従来一般的に使われている共焦点顕微鏡システムよりも高速に材料評価を可能にする装置系を設計・構築した(特許申請準備中、論文作成中)。このシステムは従来困難でありかつ量子センサー応用に不可欠な、量子特性の均一性などを評価することが可能であり、今後のダイヤモンド量子センサーの材料評価の中心的な装置となると考えられる。並行して、電子線照射によるNVセンター形成効率を調査した。ダイヤモンド中の孤立窒素(P1センター)がNVセンターとなるか他の欠陥となるかを、様々な窒素濃度のサンプルに対して電子線照射量を変えながら評価した(S. Ishii, YM et al., Quantum beam sci. 6, 2 (2022) )。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ渦および半導体不足の状況において、制御システムに必要な機器の一部が納入出来なかったことおよび装置の故障により、遅延が生じた。そのため、ダイヤモンド量子センサーの高感度化の重要な要素である材料部分の特性の評価・改善を集中的に行った。高速に材料評価を可能にする装置系を設計・構築することに成功し、特許や論文を準備中である。また、その評価装置を用いて、ダイヤモンドの作製での条件の最適化やダイヤモンド中にNVセンターを形成する良い条件を探索し、それぞれの成果に対して論文出版予定である。
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今後の研究の推進方策 |
磁性粒子を励振するシステムとダイヤモンド量子センサーを組み合わせる。具体的には、磁性粒子を励振するシステムでの信号検出をピックアップコイルで最適化した後に、量子センサーの位置決めを行い、最適な構成を決定する。また、昨年度装置トラブルにより行えなかったダイヤモンド量子センサの量子制御シーケンスの最適化を行い、磁性粒子から発せられる磁場の高調波信号の高感度検出を可能にすることで、磁性粒子の検出を実現させる。さらに、生体内を模した環境を用意し、その環境下での磁性粒子の応答磁場の高調波成分の周波数依存性を計測し、生体内で使いやすい周波数を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、コロナ渦および半導体不足の状況において、量子制御システムに必要な物品の納期が間に合わず、発注を断念したためである。 次年度の使用計画は、2021年度に購入することが出来なかった物品に使用する予定である。
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