研究課題
電子系において議論されているトポロジーの概念は電子系のみならずマグノン等のボソン系にも拡張できることが明らかにされつつある。本研究ではマグノンのバンドトポロジーに関する知見を得るため、電子系におけるスピン-運動量ロッキングの磁性体版に対応する擬スピン-運動量ロッキングをカゴメ格子反強磁性体を舞台に検証する。研究初年度は水熱合成法により数十mg程度のジャロサイト単結晶試料の作製することに成功したため、二年度目は重水化した単結晶試料の合成に着手した。軽水試料に関する試行錯誤により界面での酸化還元反応をいかに制御するかが重要であることは分かっているが、重水を用いるとpH等の条件が変わるため最初から条件を洗い直すことになった。それでも事項錯誤の結果、かなり条件を絞り込むことができたため、近々軽水試料と同程度の大きさの単結晶試料が得られることになると期待される。平行してブリージングカゴメ格子反強磁性体Yb3Ni11Ge4の磁性を中性子散乱によって研究した。研究用原子炉JRR3の再稼働に伴い三軸分光器を利用することが可能となったため、Ybの結晶場基底状態を明らかにすべく中性子非弾性散乱実験を行った。また、三軸分光器CTAX(ORNL)を利用し極低温における中性子非弾性散乱実験も進めており、引き続き研究を進めることで本物質における磁気励起の詳細も明らかになることが期待される。さらにスピン-運動量ロッキングの舞台として期待できるハニカム格子反強磁性体の物質開発も進め、RuX3(X=Br,I)を見出した。
3: やや遅れている
重水化した単結晶試料に関する合成の遅れがあるが、カゴメ格子反強磁性体の磁性の解明やハニカム格子反強磁性体の物質開発が進んだことを踏まえて総じてやや遅れていると評価する。
引き続き重水化単結晶試料の合成を進めるが、最終年度であるため並行して軽水単結晶試料を用いた中性子非弾性散乱実験を行えるかどうかを検証する。
重水化した単結晶試料の合成に遅れがあるため、原料分(主として重水)を次年度使用額に回している。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件)
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