研究課題
電子系において議論されているトポロジーの概念は電子系のみならずマグノン等のボソン系にも拡張できることが明らかにされつつある。本研究ではマグノンのバンドトポロジーに関する知見を得るため、電子系におけるスピン-運動量ロッキングの磁性体版に対応する擬スピン-運動量ロッキングをカゴメ格子反強磁性体ジャロサイトを舞台に検証することを目的とする。研究初年度においては単結晶試料の合成に着手し数十mg程度の大きさの単結晶試料の育成に成功した。二年度目においては主に重水素化した単結晶試料の合成に着手したが、十分な大きさの単結晶試料を得るには至らなかった。そこで、最終年度においてはバックアッププランとして軽水素試料50mgを用いた中性子非弾性散乱実験を行い、Γ点からM点にかけて3本のマグノンモードの分散を観測した。この内バンド交差する2本の散乱強度の波数変化からマグノンバンドの波動関数が議論できると期待される。平行してブリージングカゴメ格子反強磁性体Yb3Ni11Ge4の磁性を中性子散乱によって研究した。中性子非弾性散乱実験によって観測された結晶場励起から各Yb3+イオンの波動関数を決定し、かつ同じく中性子非弾性散乱実験によって観測された低エネルギー励起からこれらの擬スピン1/2間の磁気相互作用の存在を明らかにした。さらに、スピン-運動量ロッキングの舞台として期待できるハニカム格子反強磁性体としてRuX3(X=Br,I)を見出す等の副次的な成果も得られた。
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