研究課題/領域番号 |
20K14399
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井土 宏 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任准教授 (20784507)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スピントロニクス |
研究実績の概要 |
本研究課題では2次元物質における反強磁性相に着目し、その界面におけるスピン効果を対象としている。特に2次元反強磁性体のもつ高い結晶性と、そのヘテロ界面を利用することでその素励起(反強磁性マグノン)や秩序パラメータとどのように相関するかを追及している。 2021年度は2次元反強磁性体相を持つ物質を、プラチナと接合し、その界面の輸送現象を通じてスピン物性を検出する研究を推進した。まず、この系において、面内磁場下の伝導度の角度依存性が、特徴的な振動を示すことを明らかにした。特に、その振動位相から、強磁性相ではなく、反強磁性相において期待される信号と合致することを明らかにした。2次元物質のない(プラチナ層のみの)試料を参照試料として行った同様の実験とは、特徴的な信号は有意に異なることを明らかにした。温度依存性と磁場依存性から、さらに反強磁性相に特徴的な信号を検出出来ていることが分った。複数の試料について行った実験から再現性を確かめた。また、スピン秩序が壊れたと相においても一定の信号を得ることができ、重要なプローブとなることが分った。スピン秩序が壊れた相に関して、共同研究者との議論を精力的にすすめた。反強磁性相を一般化した、磁気秩序も磁気超格子も存在しない場合において、振動信号が生じえることを明らかにした。これにより、一般化したスピン異方性をもとに、反強磁性スピン秩序が壊れた相とのクロスオバーや、従来捉えがたかった転移温度の測定などへと発展できることを明らかにした。これらの結果について学会発表を行うとともに、論文投稿へとすすめた。また、並行して他の2次元反強磁性物質においても同様の実験をまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は海外での研究も視野に入れていたが、COVID-19の影響もあり、国内での研究に注力している。2021年度においては、2次元反強磁性体相を持つ微結晶を、プラチナと接合し、その界面を通じてスピン物性を検出する研究を推進した。まず、この系において、面内磁場下の伝導度の角度依存性が、特徴的な振動を示すことが分かった。特に、その振動位相から、強磁性相ではなく、反強磁性相において期待される信号と合致することが分った。温度依存性と磁場依存性から、さらにRuCl3の反強磁性相に特徴的な信号を検出出来ていることが分った。また、スピン秩序が壊れたと相においても一定の信号を得ることができ、重要なプローブとなることが分った。
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今後の研究の推進方策 |
延長後の最終年度である2022年度は、2021年度までに得られた実験・解析結果をとりまとめ、研究成果として発信することを主体とする。(アルファ相)3塩化ルテニウム結晶における結果に加えて、他の2次元反強磁性体物質における研究結果も解析をすすめて学会発表や論文出版として成果報告を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は2021年度が最終年度であったが、延長し、成果発表や追実験を行うため。学会参加費や論文出版費用、追試験に必要な消耗品の支出を計画している。
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