• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

有機超伝導体における熱輸送測定を用いたFFLO秩序変数の空間変調ベクトル観測

研究課題

研究課題/領域番号 20K14400
研究機関東北大学

研究代表者

杉浦 栞理  東北大学, 金属材料研究所, 助教 (20869052)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード超伝導 / 有機導体 / FFLO超伝導 / 低温物性 / 強磁場
研究実績の概要

超伝導電子対(クーパー対)がゼロではない有限な重心運動量qを持つFulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov(FFLO)超伝導は、BCS理論(q = 0)の枠組みでは説明できない秩序変数Δ(r)の空間変調を示す「エキゾチック超伝導」という新たな枠組みの超伝導としてその相転移磁場やΔ(r)の直接観測に興味が持たれている。数ある超伝導体の中でも、層状有機超伝導体はFFLO超伝導の厳しい発現条件をよく満たすことから、FFLO相転移磁場や相内部の構造を明らかにしようとする研究が盛んにおこなわれてきた。本研究ではFFLO状態において、熱・電気輸送特性の面内異方性から重心運動量ベクトルを観測する事を目的としている。この目的達成のためには強磁場・極低温測定における限られた試料空間に精密熱測定機構を組み込む事が必須となる。初年度ではまずこの測定システムの立ち上げと、熱起電力測定と照らし合わせるための詳細な電気抵抗測定を行った。
実験の結果、FFLO超伝導状態の存在が示唆されている有機超伝導体β"-(ET)2[(H2O)(NH4)2Cr(C2O4)3]・18-crown-6(β"-Cr塩)の強磁場超伝導相内における有限抵抗領域において超伝導相内において抵抗の振動を観測した。先行研究との比較から、これは、FFLO状態における秩序変数の振動周期と超伝導渦糸量子が形成する格子周期との整合・不整合に起因した抵抗変化であると考えられる。この振動の詳細な磁場方位異方性調べた結果からは、面内異方性が極めて小さい可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

強磁場・極低温装置の試料空間に合わせたこれまでにない小型の測定セルの作成および磁場中・低温超伝導相内での実験を行った。低磁場超伝導相では超伝導渦糸ダイナミクスに起因する起電力変化を観測し、このセットアップをより強磁場・極低温での実験へと対応させる事を試みた。初年度は実験中断期間や出張制限があったことに加え、予定していた測定セルセットアップのままでは十分な試料空間を確保できないこと、また断熱が十分ではなく本研究で求める精度での温度制御で測定を行うことが困難である事が明らかとなったため、セットアップの見直しを行った。

今後の研究の推進方策

新たに作成したセルを用いて強磁場におけるFFLO超伝導相内でのネルンスト効果測定を行う。さらにその磁場方位異方性を明らかにし、電気抵抗の結果と比較する事でFFLO超伝導の異方性を議論する事を目指す。

次年度使用額が生じた理由

申請時からの為替相場の変動によって物品費が予定額を下回った。さらに本年は国威祭会議の中止、学会・研究会等の現地開催見送りが相次いだため予定していた出張費、会議参加費分で差額が生じた。差額は前年度の実験結果を踏まえ、より良い測定環境を構築するための部材購入、および高騰が続く寒剤購入に充てる事を計画している。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 層状有機超伝導体β"-(ET)2[(H2O)(NH4)2Cr(C2O4)3]・18-crown-6 におけるFFLO超伝導2021

    • 著者名/発表者名
      杉浦栞理
    • 学会等名
      日本物理学会第76回年次大会

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi