有機導体は、低次元性と電子相関に由来した、電荷とスピンの性質が複雑に絡み合った多様な物性を示す。有機導体の物性を調べる方法として、これまで核スピンI=1/2の炭素・水素核を利用した核磁気共鳴(NMR)法が用いられてきたが、この場合核スピンは磁場のみと相互作用する。本研究では、磁場に加え電場勾配と相互作用を持つI≧1の核種に着目し、有機導体における核四重極共鳴法を開拓した。その結果、伝導層における電荷秩序パターンの検証や特異な電荷ゆらぎの観測に加え、核スピンが絶縁層に位置することを利用した伝導層間の相互作用の大きさの評価など、これまでのNMR法では得られない有機導体の物性を明らかにした。
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