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2022 年度 実施状況報告書

相互作用する量子多体系におけるトポロジカル秩序相の微視的理論

研究課題

研究課題/領域番号 20K14402
研究機関東京大学

研究代表者

藤 陽平  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (50802732)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードトポロジカル相 / 量子スピン液体 / 測定誘起相転移 / エンタングルメント
研究実績の概要

空間2次元において、非自明な統計性に従う準粒子励起を持つ可解な格子模型としてtoric codeがよく知られている。本年度はtoric codeをN個の準位を持つスピン系へと拡張し、その一般的性質を議論した。特に、トポロジカル秩序相を特徴づける基本的性質であるトーラス上の基底状態の縮退度が系の大きさによって変化することや、模型のパラメータに応じて部分系対称性に守られたトポロジカル相を発現することを示した。このように単純でありながら非常に多彩なトポロジカル物性を示す格子模型は、今後関連する物理現象をより深くする理解する上での重要な「おもちゃ模型」として機能すると期待される。これらの結果を報告した草稿はプレプリントサーバー(arXiv:2211.00299)に公開されており、現在投稿中である。
また、局所的な演算子の射影測定のもとで時間発展する量子多体系において発現する測定誘起相転移が、新奇な非平衡現象の舞台として近年注目を集めている。我々は粒子数保存に対応したU(1)対称性が存在する場合に、従来知られていたエンタングルメントで特徴づけられる相転移とは別に、部分系の粒子数の揺らぎで特徴づけられる新たな臨界現象が現れることを示した。この結果は測定誘起相転移という非平衡現象においても、平衡系の相転移と同様に対称性が本質的な役割を果たすことを示唆しており、近年実験的にも発達している量子測定による量子状態の制御やそれを用いたトポロジカル相の実現においても重要な示唆を与えると期待される。これらの結果は既に論文(査読あり)で公表されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまで進めていた量子細線によるトポロジカル相の構成とは異なった路線で、トポロジカル相に対する新奇な格子模型や測定誘起相転移について新たな研究の萌芽となるような結果が得られたため。

今後の研究の推進方策

前年度まで中心的に研究を進めてきた量子細線を用いたトポロジカル相の構成法に関連して、空間3次元のいくつかのフラクトン相において、準粒子の伝搬に特徴的な幾何学的構造が現れることを新たに発見したため、準備中の論文草稿の改訂を進めたい。また、3次元トポロジカル秩序相やフラクトン相を記述する場の量子論や、トポロジカルな線欠陥について量子細線による構成法の立場からさらに研究を進めたい。
また、今年度の研究で扱った2次元toric codeの一般化を高次元の格子模型に拡張することや、対称性の存在下において固有の測定誘起相転移についてより進んだ研究を進めたい。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの流行のため国内外の研究会が中止あるいはオンライン開催となり、旅費として使用予定であった過去2年分の助成金が大幅に余っていた。本年度はようやく2件の海外出張を行ったが、それでも当初予定していた支出額そ下回っている。翌年度はこれらの助成金を、書籍の購入や、研究会参加のための旅費、論文出版時にオープンアクセスのための費用等に充てる予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Yale University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Yale University
  • [雑誌論文] Charge fluctuation and charge-resolved entanglement in a monitored quantum circuit with U(1) symmetry2023

    • 著者名/発表者名
      Oshima Hisanori、Fuji Yohei
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 107 ページ: 014308(1-20)

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.107.014308

    • 査読あり
  • [学会発表] 量子細線・レイヤーによる3次元トポロジカル相の構成2023

    • 著者名/発表者名
      藤陽平
    • 学会等名
      物性研短期研究会「固体におけるエニオンと分数統計粒子研究の最前線」
    • 招待講演
  • [学会発表] Measurement-induced criticality in monitored quantum circuits with U(1) symmetry2023

    • 著者名/発表者名
      Hisanori Oshima, Yohei Fuji
    • 学会等名
      APS March Meeting 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] Ground state degeneracy on torus in topologially ordered phases2023

    • 著者名/発表者名
      Haruki Watanabe, Yohei Fuji, Meng Cheng
    • 学会等名
      APS March Meeting 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] Bridging three-dimensional coupled-wire models and cellular topological states: Solvable models for topological and fracton orders2022

    • 著者名/発表者名
      Yohei Fuji, Akira Furusaki
    • 学会等名
      APS March Meeting 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] Bridging three-dimensional coupled-wire models and cellular topological states2022

    • 著者名/発表者名
      藤陽平
    • 学会等名
      基研研究会・iTHEMS研究会「格子上の場の理論と連続空間上の場の理論」
  • [学会発表] U(1)対称性のある量子回路における測定誘起臨界性2022

    • 著者名/発表者名
      大島久典, 藤陽平
    • 学会等名
      日本物理学会2022年秋季大会

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公開日: 2023-12-25  

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