| 研究課題/領域番号 |
20K14409
|
|---|
| 研究機関 | 東京大学 |
|---|
研究代表者 |
浅井 晋一郎 東京大学, 物性研究所, 助教 (00748410)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
| キーワード | 酸素分子 / 磁性 / 中性子散乱 |
|---|
| 研究実績の概要 |
本研究では、細孔性金属錯体に酸素分子がファンデルワールス力で物理的に吸着することで形成される磁性体(酸素分子磁性体)を新たに探索し、それらのスピンと格子の強い相関によって起こる新奇な現象を発見、解明することを目的に、錯体合成システムを構築する。さらに、成果が期待できるものに関してはホストの金属錯体の重水素化を行い、中性子散乱実験を行いそのスピンハミルトニアンを明らかにするものである。
今年度は、酸素分子磁性体と同様にファンデルワールス力によって結晶化している擬二次元物質Fe5-xGeTe2の中性子散乱研究を行った。オークリッジ国立研究所に設置されたHB-2A中性子回折計を利用した単結晶中性子回折実験では転移温度以下で明瞭な磁気反射を観測した。得られた反射の強度に対するリートベルト解析によって120 K以下で実現する強磁性秩序を示す複雑な磁気構造を明らかにした。また、J-PARC、MLFに設置されたHRC分光器を利用した粉末非弾性散乱実験によって強磁性スピン波励起を観測し、理論計算との比較からスピンハミルトニアンにおける磁気異方性と最近接の磁気相互作用の大きさを決定した。この結果をまとめて学会発表を行い、さらに論文を近日投稿予定である。
重水素化したCPL-1を利用した酸素分子磁性体の中性子非弾性散乱実験については議論を重ねた結果オークリッジ国立研究所で実験を行うこととした。実験課題を申請しつつ必要な準備を進めた。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初は重水素化したCPL-1の中性子非弾性散乱実験についてはJRR-3を利用する予定であったが、令和3年度のサイクルではマシンタイムを用意することができなかった。本実験は特注の酸素導入システムに関する操作が必要になるため実際に実験に参加することが必須であるが、海外での実験施設に赴き現地で実施を行うのは引き続き難しい状況が続いていて、総合して研究はやや遅れているという判断である。
|
| 今後の研究の推進方策 |
中性子実験については、2022年中にオークリッジ国立研究所で実験を行う予定である。特注の実験プローブを利用し複雑な手順で酸素導入を行う必要があるため、コロナウイルス感染症の影響を考慮しつつ可能な限り現地での実験に参加する。酸素導入用プローブは設計中であり、必要な備品も購入している。錯体合成システムは小規模なものをまず構築し合成を進める。まずは研究計画通り、CPL-1、Cu2(9-AC)4pyz及びCu2(4-F-bza)4(2-mpyz)を合成し、実験を進める。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
本研究で使用する中性子実験用プローブは実際の実験に利用する冷凍機に合わせて特注のものを作製する必要があるが、令和3年度は中性子実験を実施する予定が立たなかったためプローブの作製とそれに合わせた備品の購入を見送った。そのため、次年度使用額が発生した。次年度はすでに予定されている中性子実験に向けて早急に備品の購入を進める。
|
