研究課題/領域番号 |
20K14412
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
村上 雄太 東京工業大学, 理学院, 助教 (70845289)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非平衡物性 / 光誘起相転移 |
研究実績の概要 |
本研究は、外場による励起後に出現する非平衡定常状態を記述する手法の開発とそれを用いた非平衡秩序相の出現可能性の議論を行うことを目的にしている。 本年度は特に非平衡現象のうちphoto-dopingに注目し、そこで現れる非平衡定常状態の記述のある種の有効模型を用いた定式化を行った。そして、1次元拡張Hubbard模型に注目し、infinite time-evolving time decimation(iTEBD)と呼ばれる数値計算手法を組み合わせて、photo-dopingにより出現しうる光誘起秩序状態を明らかにした。特に、光誘起超伝導状態や電荷秩序状態の性質を明らかにし、それらの出現機構を解明した。 この定式化は一般的であり、これまで確立されているさまざまな平衡系の手法を用いて非平衡状態を記述できることに特徴がある。今後は、この定式化を基に、さまざまな強相関模型と動的平均場理論などの理論手法を用いることで、非平衡秩序相をより系統的に調べていく予定である。 また、短時間の計算でも揺らぎの発展などをみることで、非平衡定常状態で現れる秩序相をある程度予想できる。これを踏まえて、強相関電子系における3バンドの短時間シミュレーションを行い、励起子秩序相が励起によって発現しうる条件を特定した。今後は、この結果を踏まえつつ非平衡定常状態を考えることで、短時間シミュレーションで予測される状態が出現しうるかどうかを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、強相関電子系の非平衡定常状態の記述には非平衡状態に特化した手法を用いて計算する必要があった。一方、われわれはある種のユニタリ変換を用いた有効模型を構築することで、問題を実質的に平衡問題に焼き直した。これにより、これまでにある様々な平衡状態の手法を用いることで、非平衡問題を扱えるようになった。 これは当初予想していなかった手法であるが、これにより本研究の目標を達成する上で重要なステップであると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度導いた定式化をベースに、さまざまな強相関模型と理論手法を用いることで、非平衡秩序相をより系統的に調べていく予定である。特に、ハシゴ型の系や高次元の系を考えることで、d波の超伝導誘起の可能性や他の新しい状態の出現を明らかにしていく予定である。 また、この手法とレート方程式を組み合わせることで時間発展を記述する新しい手法の開発も視野に入れている。 さらに、この手法と似たようなアイディアを用いることで、FeSe系で報告されているような光励起によるホールポケットと電子ポケットの非平衡分布により特徴付けられる、非平衡状態を記述する手法を確立し、超伝導増強の可能性を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で、予定していた海外の共同研究者訪問や研究会参加の予定が全てキャンセルされたため。 本年度は、研究環境を整えるために計算機の購入に充てる予定である。 また、ワクチン接種の進み具合を勘案しながら出張や海外参加を行なっていく。
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