研究課題/領域番号 |
20K14425
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
渡邊 千穂 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 助教 (50838076)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高分子 / 相分離 / パターン形成 / 濃度 / 乾燥 |
研究実績の概要 |
近年、細胞中で特定のタンパク質やRNA同士が集まる「細胞内相分離」とよばれるダイナミックな不均一構造が見出され、これまでの生体膜によって仕切られた場とは異なる機能発現場として急速に着目されている。一方でこれらの細胞内相分離形成に対する生体膜の役割はほとんど未解明であった。生体膜はとくに真核細胞ではオルガネラ膜としても細胞内に多量に存在するため、細胞内相分離形成に対する効果を調査することは重要である。そこで本研究では、ソフトマター物理や高分子材料工学において広く用いられてきている高分子溶液からなる固着液滴(sessile droplet)を用い、ダイナミックに形成される相分離に対する生体膜成分の効果解明を目指している。 2020年度は、生体膜成分の効果解明を目指す準備として、研究計画に基づいて固着液滴乾燥相分離過程における高分子濃度の効果を調査した。具体的には初期条件では一相状態を示す、2種類の水溶性高分子(デキストラン、ポリエチレングリコール)混合水溶液をモデル溶液として用い、重量比組成を一定として、様々な濃度で調製、ガラス基板上に固着液滴を作製し、その乾燥過程の光学顕微鏡(位相差・簡易偏向)観察を行った。その結果、同じ重量比組成であっても、濃度依存的に異なるパターンを示すことが明らかになった。とくに、低濃度と高濃度ではかなり異なるパターンを示した。より詳細な観察を行うために、蛍光分子付きのデキストランおよびポリエチレングリコールを初期溶液に混合し、相分離にともなう濃度分布の可視化を行った。次年度以降は中心課題であるの生体膜を導入した際のパターン形成の変化を調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の中心目標であった高分子濃度効果について、一定の知見が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に生体膜モデルである数百nmサイズの脂質膜小胞(LUV)を作成する装置を購入し、導入を行った。今後は、2020年度に明らかにした濃度依存的なパターン形成過程の知見に基づき、特定の濃度域に着目して生体膜の混合効果を明らかにしたい。さらに、生体膜成分の脂質組成を制御し、組成依存的なパターン形成の有無を明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の研究実施に必要な機器、試薬等を予定より安価に揃えることができたため次年度使用額が生じた。次年度の実験用資材の拡充にあてたい。
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