研究課題/領域番号 |
20K14425
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
渡邊 千穂 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 助教 (50838076)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 液滴 / 高分子溶液 / パターン / 相分離 / 乾燥 / 蛍光顕微鏡 |
研究実績の概要 |
本年度も、昨年度に引き続き、高分子溶液からなる固着液滴(sessile droplet)の乾燥にともなう相分離構造形成とダイナミクスについての実験を実施した。具体的には、初期条件では一相状態を示す、2種類の水溶性高分子(デキストラン、ポリエチレングリコール)混合水溶液をモデル溶液として用いて、ガラス基板上における乾燥にともなう相分離および特異なパターン形成を(i)初期溶液高分子濃度、(ii)高分子組成および(iii)高分子を構成単位のモノマーユニットに置き換えた場合の3点に着目して観察した。その結果、ポリエチレングリコールとデキストランの混合溶液の乾燥により相分離が進行するとともに、ガラス基板上での筋状の特異なパターンを形成することを見出した。このパターンは、デキストランの繰り返し単位であるグルコースを用いた場合には観察されなかった。ポリエチレングリコールまたはデキストランのみからなる溶液を同様にガラス基板上で乾燥させたところ、前者は固着液滴の中心部へ後退していく傾向が、後者は周縁部に堆積し、波うちをもったリングを形成する傾向があることを見出した。このポリエチレングリコールとデキストランの対照的な傾向(中心に向けて後退/ 周縁部に蓄積)は、それぞれの高分子からなる溶液の接触角測定の結果からも裏付けられた。以上から、相分離にともない、液滴周縁部に生じるデキストランrich相を、液滴中心へと後退するPEG rich相が引き込むことで、特徴的な筋状のパターンが形成されることを示した。これらの結果について、学会(2件)と論文(1報)にて報告した。また、PEGおよびデキストランの分子量を変化させ同様の実験を行い、パターンの変化を調査した。さらに、可視化にむけた予備的な実験を開始した。今年度明らかにした特異なパターンが脂質添加によってどのように変化しうるかを調査していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずもっての課題であった、初期濃度と組成がパターン形成に与える影響をまとめて報告することができた。続いての課題である脂質の効果を明らかにするには至っていないものの、基礎となる注目すべきパターンを明らかにできたことにより、今後の迅速な進展が見込まれる。さらに、乾燥過程の可視化についても予備的ではあるが実験を開始できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、相分離にともなうパターン形成に対する脂質膜の効果、および乾燥過程の可視化について取り組む。
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