研究課題/領域番号 |
20K14435
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
足立 景亮 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (40849626)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アクティブマター / 非平衡相転移 / 相分離 / 臨界現象 |
研究実績の概要 |
統計物理学の発展により、平衡状態における相転移の理解が進んできた。一方、詳細釣り合いを満たさない非平衡状態でも相転移が起こることが知られているが、平衡相転移との共通点・相違点や、平衡相転移のように臨界現象の普遍性が現れるかどうかは明らかでない。これまで、理論解析やシミュレーションを用いて非平衡相転移の特徴を調べた。
細胞のように自ら動く力をもつ要素の集まり(アクティブマター)のモデルを考え、基板の配向性などによって空間的異方性が生じた場合の相転移の特徴を理論的に調べた。格子モデルのシミュレーションや粗視化理論の解析の結果、空間的異方性によって非平衡性が密度相関関数に顕著に反映されるようになることがわかった。密度相関関数は距離の関数としてべき的に減衰する長距離相関を示し、異方性の導入によって遠く離れた要素同士が有効的に相互作用するようになることがわかった。この結果は、過去に外場誘起格子気体などの非平衡多体系モデルのシミュレーションで見られていた普遍的な長距離相関に対応するものであり、アクティブマターと他の非平衡多体系との関係を示している。
また、異方的な系では、自ら動く力と要素間の排除体積相互作用の組み合わせで生じる相分離(モティリティ誘起相分離)が異方的なパターンを作ることがわかった。この異方的なモティリティ誘起相分離の相転移の臨界現象を調べると、二温度モデルと呼ばれる別の非平衡多体系のモデルと同じ普遍性を示すことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた実験を行うことはできていないが、理論研究を発展させることで、細胞集団のようなアクティブマターと外場駆動格子気体や二温度モデルのような他の非平衡多体系とを結びつける結果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでのアクティブマターモデルの研究を発展させることで、非平衡多体系の代表例としてアクティブマターにおける相転移を理論的に分類することを目指す。また、アクティブマターにおける相転移と平衡多体系や他の非平衡多体系における相転移との関係を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症の流行により予定されていた研究会の開催が全てオンラインとなったため、旅費を支出する必要がなくなった。また、新たに物品を買わずに研究を遂行することができたため、次年度使用額が生じた。
次年度は、物品(計算機、研究関連書籍)の購入費用、研究会の参加費・旅費、論文出版費用に研究費を使う予定である。
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