研究課題
本研究は、高強度レーザー光を固体に照射した際に生成される、圧力が1億気圧を超える高温・高密度(高エネルギー密度)のプラズマを、数値シミュレーションを活用して理論的に研究し、プラズマ中で起こる粒子加速の物理機構と電磁場構造形成・発展との関係を解明することを目的としている。今年度の本研究では、昨年度までに明らかにしたレーザー光照射下での高エネルギー電子の空間分布発展およびイオン加速について、より大規模な2次元プラズマ粒子シミュレーションを行い、その特性を調べた。今年度実施したシミュレーションでは、レーザー光による電子加速の特性時間のおよそ2万倍の長時間にわたって、固体密度領域の加熱を含めた多次元プラズマダイナミクスを観測することができた。理論モデルでは、長時間の光照射下で電子が自己生成電磁場に何度も散乱されることで、レーザースポット内からのエネルギー流出が抑制されることを提唱していた。本年度行った解析により、上述の電子散乱効果で強い自己生成電場が長時間保持され、レーザー光から高エネルギーイオン流へのエネルギー変換効率が高くなることが明らかになった。これは、レーザー駆動イオンビーム生成とその応用のための基礎となる成果である。研究期間全体を通じて、高強度レーザー光によるエネルギー注入下でのプラズマ構造形成過程と粒子加速機構の解明に関して理論・シミュレーション研究に取り組み、ミクロな電子加速からマクロな電磁場構造形成とエネルギー変換率までの統合的理解につなげることができた。研究成果は、プラズマを利用した光量子ビーム生成、制御核融合などの技術につながる基礎的な知見を提供するものであり、高エネルギー密度プラズマが関わる宇宙物理学や物質科学の発展にも貢献するものである。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Physical Review Research
巻: 5 ページ: 013062-1,10
10.1103/PhysRevResearch.5.013062
Physical Review E
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