研究課題/領域番号 |
20K14443
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山崎 広太郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (00782468)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 磁化プラズマ乱流 / トモグラフィ計測 / 流速シア |
研究実績の概要 |
本研究では,磁化プラズマ内部で生じる乱流が引き起こす構造形成と磁力線方向の流れシアの関係をレーザー計測,マイクロ波計測およびイメージング計測を用いて明らかにすることを目的としている.本年度は計測により得られた投影行列からトモグラフィシステムの分解能評価手法の開発を行った.
プラズマを対象とするトモグラフィ計測では,観測領域にあるプラズマから生じる光の視線積分量から発光量2次元分布を推定する.プラズマから生じる発光量の2次元分布が示す時間発展データを用いてプラズマ乱流の空間構造を取得する.本研究の主眼はトモグラフィ計測を用いてプラズマ中心部から周辺部にわたる領域に生じる乱流の空間構造を一度に取得することにある.そのため現在用いているトモグラフィ計測の空間分解能を定量的に評価する手法が必要となる.
プラズマを対象とするトモグラフィ計測は,観測領域内の微小領域に光源を置いた場合に各計測視線で得られる視線積分発光量データとの対応関係(写像)を用いて発光量2次元分布を推定する逆問題である.そのため,観測できる空間構造は観測領域内に置いた微小光源と視線積分発光量の写像(投影行列)の性質で決定される.本年度の研究では,昨年度行ったトモグラフィ計測システム較正手法で得られた投影行列に対してランク推定(Bi-cross validation)および視線積分発光量データの内積値を用いてトモグラフィシステムの空間分解能を定量的に評価する手法を開発した.本年度開発した手法を用いることで,現行のトモグラフィ計測システムでは中心部から半径2 cmより外側ではm≧4の構造が観測できることが判明した.また,視線配置の性質から現状のトモグラフィ計測システムではm=6以上の高い周方向モード数を持つ空間構造を観測できないことが判明した.上記の内容をまとめた論文の執筆を開始している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はトモグラフィ計測システムの分解能を実験的に評価する手法の確立およびトモグラフィ計測分解能評価手法を利用した新たな視線設計を目標としていた.上述のように昨年度取得した投影行列の実測データを用いてトモグラフィシステムの空間分解能を定量的に評価する手法の確立に成功した.本研究ではプラズマ中心部と周辺部におけるプラズマ乱流の空間構造を同時に観測し乱流の分類および棲み分けを実験的に評価することが主眼であるため,トモグラフィ計測で観測できる空間構造の限界を定量的に定めることは本研究遂行にあたって重要な進展であると考える.また,この解析手法を用いることでプラズマ中心部のプラズマ乱流の小さな構造を観測するためには中心部を観測する視野角の狭い視線が必要であること等,本研究を遂行するために必要な視線の設計指針を得ることができた. 新たな視線の設計を現在進めているところであるが,コロナ禍により実験装置がある九州大学まで出張する機会がほとんど得られなかったため導入に関する検討は来年度から開始する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
本年度実施した研究により,プラズマ乱流の空間構造抽出に必要なトモグラフィ計測の分解能評価方法の構築および新たな視線設計の指針を確立することができた.次年度からは, (i)トモグラフィ計測の分解能向上のための計測視線設計 (ii)高空間分解能トモグラフィ2系統を用いた乱流3次元波数スペクトル取得方法の確立 を行い,本研究遂行の要である波数スペクトルを用いた磁化プラズマ乱流の分類を可能にする. (i)について:本研究ではプラズマ中央部から周辺部にわたって磁化プラズマ乱流の同時観測を行うことにある.そのためプラズマ断面全域に渡って高い周方向モード数を持つ空間構造を観測できるトモグラフィシステムを構築することが必要である.本年度開発した空間分解能評価手法により現状ではm=4程度の空間構造はr<2cmの範囲において観測が困難であることがわかっている.その原因として,現在用いている計測視線の配置の偏りおよび計測視線の広がり効果が考えられる.次年度は新たな解析手法を駆使して必要な分解能を達成できるコリメータの設計および最適な視線配置の模索を行う. (ii)について:十分な空間分解能を達成できる計測視線設計を実際に装置に導入し,2箇所の断面における乱流の空間構造を同時計測する.トモグラフィ計測データを解析するために我々が開発した手法を拡張し,2箇所で得られた再構成データから乱流の3次元波数スペクトルを抽出する手法を開発する.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度九州大学で複数回実験を行う予定で予算を計上していたが,コロナ禍により出張を行える機会を失ったため旅費・消耗品費の執行が遅れている.次年度は新たな計測視線の設計および設計した視線を実際に装置に導入するため,昨年度執行できなかった旅費・消耗品費はここで執行する.
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