研究課題/領域番号 |
20K14446
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
金 史良 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 那珂研究所 先進プラズマ研究部, 研究員 (40846747)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 雪崩輸送 / 自己組織化臨界現象 / 硬直性分布 / マイクロ波反射計 / 電子サイクロトロン放射計測 / 帯状流 / ストリーマ / ドリフト波乱流 |
研究実績の概要 |
本研究はトカマクプラズマにおける内部輸送障壁(ITB)の大域的応答の理解を目指した研究である。ITB形成/非形成時における熱流束や径電場のダイナミクスを比較することで、コアプラズマの輸送機構とITBの形成条件を実験的に検証する。今年度は、(1)トカマク型装置JT-60Uの加熱パワースキャン実験を対象に、電子系の雪崩的熱輸送を観測してその駆動する熱流を評価し、ITBを含めた分布形成に及ぼす影響を検証し、(2)直線磁場装置PANTAの中性粒子圧力スキャン実験を対象に、径方向輸送に大きな影響を及ぼす対流胞の競合的振る舞いを観測した。(1)に関しては、プラズマへの加熱パワーを増加させていくと、O-modeマイクロ波反射計の揺動スペクトルが突発的に増加することが観測された。突発的揺動は電子サイクロトロン放射計測(ECE)により観測される電子温度変動と同期しているため、コンディショナル平均を施すことでECEのノイズレベルを2桁以上低減した電子温度変動を抽出することができた。電子温度変動は、プラズマ中心・外側にそれぞれ局所拡散的速度を上回る速度で伝播する大域的な雪崩輸送であることが分かり、熱流速を評価して、硬直性分布とITBの形成における雪崩輸送の影響を調査した。加熱パワーの増大につれて硬直性分布を保つための熱損失がavalancheによって賄われること、ITB形成時にはavalancheが抑制される必要があること、が判明し大域的な雪崩輸送の分布形成に及ぼす重要性が示された。(2)に関しては、大域的輸送の基礎過程の理解を目指して研究を展開した。輸送に大きな影響を及ぼす中間スケールの対流胞、帯状流とストリーマの競合過程を観測することができた。中性粒子圧力の増加により、帯状流の減衰とストリーマの増大が観測され、乱流の構造形成選択則についての実験的な検証が進展した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
JT-60Uにおける雪崩輸送の観測とPANTAにおける帯状流とストリーマの競合、という2つの重要な結果が得られた。PANTAでの研究は、本来目指していた米国渡航(DIII-D装置)が新型コロナの影響により困難となったことから展開したが、順調な成果が得られた。どちらも論文投稿の準備中であり、計画は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
まずは今回の研究成果を論文化する。また、得られた知見から研究をさらに展開する。ITBの幅・高さ・位置と移動を伴うダイナミクスと、雪崩輸送の関係は重要な研究課題である。また、雪崩輸送の駆動は帯状流とも大きく関係している。雪崩輸送と電場の関係性について調査していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの感染拡大により、予定していた米国出張が困難になったため。また、学会がweb会議主体となり旅費がかからなかったため。
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