本研究は、トカマクプラズマにおける内部輸送障壁(ITB)の大域的応答の起源を探求し、ITBの形成機構の理解を目指した研究である。ITB形成/非形成時における熱流束や径電場のダイナミクスを多点空間で比較することで、コアプラズマの輸送機構とITBの形成条件を実験的に検証する。最終年度である今年度は、ITB形成時における大域的輸送と径電場のダイナミクス及びその相互作用を観測した。荷電交換分光法(CXR)を用いて、不純物炭素のスペクトルのドップラーシフトを、トロイダル・ポロイダル方向の視線を用いて算出し径電場を評価した。その際、JT-60UにおけるCXRの視線等の影響による背景ノイズの程度を定量的に評価してスペクトルを抽出している。ITBが形成されない場合には、大域的輸送により温度勾配が緩和して径電場が成長しないが、ITBが形成される場合には、大域的輸送が低減するため温度勾配が維持され、径電場との正のフィードバック過程により温度勾配・径電場が共に成長し続ける。大域的輸送がITB形成に決定的な影響を及ぼしていることが見出された。また研究期間全体を通して、(1)定常的な負磁気シアプラズマにおける大域的なITB形成のダイナミクス、(2)コールドパルスに対するITBの大域的な過渡応答、(3)径電場の高時間分解能計測を目指したニューラルネットによる解析手法の開発、(4)突発的揺動に付随する大域的輸送の発生と硬直性分布への影響、(5)大域的輸送が径電場及びITB形成に及ぼす影響、と多くの成果を挙げることができた。
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