研究課題/領域番号 |
20K14453
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
堤 隆嘉 名古屋大学, 低温プラズマ科学研究センター, 助教 (50756137)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イオン誘起ダメージ / ラジカル吸着分布 / 原子層エッチング / ダングリングボンド密度 |
研究実績の概要 |
本研究では、プラズマによる原子層エッチング(ALE)での脱離プロセスであるイオン衝突が誘起する表面ダメージを、各種In-situ表面分析装置により被加工物表面を大気曝露させずに定量解析するとともに、そのダメージとラジカル吸着プロセスとの関係を明らかにすることを目的としている。R2年度は主にイオン照射後の不純物の残留濃度についてのイオンエネルギーやイオン種との関係を明らかした。その他にダングリングボンド密度と不純物の残留濃度との関係を明らかにするためIn-situ 電子スピン共鳴法(ESR)によるダングリングボンド密度計測に向けた装置開発を進めた。 高精度にイオンエネルギーが制御可能なプラズマビーム装置を用いて吸着種の深さ方向分布のイオンエネルギー依存性を計測・解析した。結果として、イオンエネルギーの増加に伴いより深い領域にダングリングボンドに起因する信号が観察され、その分布プロファイルは吸着プロセス後の吸着種の深度方向の密度分布プロファイルと一致することが確認された。さらに、材料固有の閾値以下のイオンエネルギーではエッチングは生じておらず、再表面にダメージ層のみが形成されることが示された。今後はより詳細なダメージ層の解析を進める。 ダメージの一種であるダングリングボンド密度の定量的な解析のために、プロセス室であるプラズマビーム装置と表面分析室であるIn-situ X線光電子分光装置からダングリングボンド密度計測が可能なESR装置へ、試料を大気曝露させることなく真空搬送が可能な搬送システムの準備をすすめ、原子層エッチングプロセス中のダングリングボンド密度を計測できる環境を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で重要な役割を果たす欠陥密度の定量解析のために、途中遅れが生じたがESR装置への真空下でのサンプル輸送システムを設計し、構築を予定通りR2年度内に完了することができた。このIn-situ ESR装置へのプラズマ源および膜厚評価装置の設置準備も順調に進んでいる。また、ALEプロセス中の吸着種であるラジカルの絶対密度を測定できるよう真空紫外吸収分光装置の組み立ても実施中である。 以上のことから、総合評価を(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
R2年度に確立したESR装置へのサンプル搬送システムを駆使して本研究課題の核心であるイオン衝突による形成されるダングリングボンド密度の定量計測およびそのイオンエネルギー依存性を明らかにする一方で、ESR装置へのプラズマ源の設置を引き続き進める。同時に、本システムに膜厚測定のために分光エリプソメトリー装置の導入も検討を続け、ラジカル照射によるダングリングボンドの終端深さやラジカル種による違いについても計測・解析する。ラジカルとダングリングボンドの反応確率を導出するため、ラジカル密度の絶対計測が可能な真空紫外吸収分光装置を新たに構築する。これらの分析・プロセスシステムを駆使して、R2年度に得られた吸着種の深度方向の密度分布プロファイルとダングリングボンド密度との相互作用を定量的に解析するとともに材料の結合エネルギーや反応生成物の蒸気圧との相関を明らかにする。これらの結果を体系化し、イオン衝突により誘起される原子数層の反応場内の欠陥を考慮した原子層エッチングの表面反応モデルを完成させ、ナノワイヤや量子ドット構造等の次世代半導体デバイスのための製造プロセスとしてダメージフリー原子層エッチングの実現に寄与する。
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