研究実績の概要 |
申請者が本研究で提案したdiagonal reflection symmetries (DRS)の現象論的展開を行なった。以前のfour-zero texture (m_{f})_{11} = (m_{f})_{13,31} = 0 for f=u,d,e,νにおいてはCKM行列の再現度が10^{-3}程度の精度にとどまり、V_{ub} = 0.003を再現できていなかったが、小さな非ゼロの(m_{u})_{11} ≠ 0を考えることでこの精度が10^{-4}に向上することを示した。このとき上記のDRSはほぼ厳密な対称性になる。
また、ニュートリノ振動行列U_{MNS}の2列目は絶対値の成分がほぼ等しいtrimaximal mixingをもち、これはmagic対称性というZ_{2}対称性から予言される。上記のDRSを持つfour-zero textureに対して、magic対称性を課すことの帰結を調べた。結果、ニュートリノ質量行列は2つのパラメーター、レプトンセクター全体は6つのパラメーターで表される。精度はO(10^{-2})と低くなるが、5つの質量パラメーターと1つの混合角(ここではθ_{23})をinputとすれば他の全ての物理量を予言できることがわかった。
また、type-I シーソー機構に対して、右巻きニュートリノ質量行列Mの1次摂動による近似的なスペクトル分解を考えることで、任意の基底で成立する厳密な公式を導出した。これは、数学的には対称行列Mの修正コレスキー(またはLDL^{T})分解に基づいている。この公式によって、シーソー機構の対称性や大きな相殺によるfine-tuningがない条件などを任意の基底で解析することが可能になる。また、通常の対角化とは違い複雑な3次方程式を解く必要がないことも解析において有用である。
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